2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子性ナノゼオライトで安定化される巨大水クラスターの構造とダイナミクス
Project/Area Number |
16350034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田所 誠 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60249951)
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Keywords | ポーラスクリスタル / 水クラスター / クリスタルエンジニアリング / 超分子結晶 / 水素結合 / 相転移 |
Research Abstract |
本研究は合成化学的なアプローチによって、細孔内に取り込まれた水クラスターの科学を研究した。従来の水の科学はバルクの水や氷を使った研究が主流であり、物性科学的な面からもあらゆる物理化学的な測定がなされている。しかし、液体としての水の構造がどのようなものなのか、あるいは水から氷になるときの相転移の臨界点やどの水分子から氷核を作っていくのか、また氷中のプロトンの長距離秩序化など、氷の多形の物性も含めて残された水分子の集合体に関する多くの課題が残されている。平成16年度は主に、現在我々が得ている結果をさらに発展させて、共同研究により、さらに低温での相転移はないのか、あるいは極低温での結晶構造解析を行うことにより、精密なIce-Nanotubeの構造を明らかにすることを目指す。特に、0℃から相転移温度の-38℃まで、できる限り精密なX線結晶構造解析を行い、相転移の挙動を解析し、細孔内の水分子がどのような動きをして相転移が起こっているのか、映像化したいと考えた。しかし、室温でのX線解析の精度が悪いため、低温のみに限って研究を行った。特に共同研究によって極低温領域までの熱測定を行った結果、-38℃での細孔中での水分子の転移は不整合であることが判った。そして、この動きが-120度まで続き、恐らくこの温度で実質的な「氷」の状態になることが判った。また、-220度でも恐らくプロトンの局在化に関するピークが観測しており、この温度でプロトンが完全に停止するものと考えている。また、プロトンの位置を決めるために中性子線回折を行った。試料は2mm各程度のものを作成し、ある程度の反射が観測され、測定できることが判ったが、本測定は17年度になりそうである。このナノチューブの-75度での構造は明らかになり、速報にてアクセプトされる予定である。水が物性科学で注目されているのはプロトン移動による半導体的な性質を持つことである。一般的に液体である水は水分子の4量体であるH_qO_4^+を構成単位として、この水クラスター間をトンネルジャンプ機構によってプロトンを伝達するものとされている。一方、氷では水分子が並進運動できないため、結晶内ではトンネルジャンプ機構よりも欠陥を介した分子回転によるプロトン伝達機構が優勢であるものとされている。我々の合成したWater-Nanotubeも単結晶であるが、水クラスターを介したプロトンの良導体であるものと考えられた。そのため、交流誘電率を用いた擬似4端子法によるプロトン伝導を測定した。その結果、湿度100%でペレット錠剤の測定を行うと1.70×10^<-5> S-cm^<-1>のプロトン伝導度をもつことが分かった。この室温のプロトン伝導度は、バルクの水では5.7×10^<-8> S-cm^<-1>、氷では1.0×10^<-9> S-cm^<-1>を示すのに比べて、〜2桁もそのプロトン電導度が高くなっていることが分かった。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] The First Metal complexes of 4,4'-Biimidazole and 4,4'-Biimidazolate with Hydrogen-Bonding Networks on the Cu(II) Complexes : 1-D Structures by N-H…X…H-N Hydrogen-Bonding,2004
Author(s)
Y.Morita, T.Murata, K.Fukui, M.Tadokoro, Kazunobu Sato, Daisuke Shiomi, Takeji Takui, Kazuhiro Naka
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Journal Title
Chem Lett. 33
Pages: 188-189
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