Research Abstract |
当該研究について,交付申請で記載した研究実施計画の各項目に関して,下記に示す研究実績を得た。 1)官能基間距離固定化法による選択的分子認識部位の開発 ●肝臓毒・シリンドロスパモプシンを用いた検討に関しては,分子内に相反するイオン性基を有するため,分子内に相反するイオン性基を持ち,分子中央部に比較的剛直なベンゼン環を有する擬似鋳型を合成し,イオン性コンプレックスによる機能性モノマーとの複合体を得た後,これを架橋剤で架橋することで両イオン交換基の距離を固定化した。用いた擬似鋳型は,モノマー溶液内に溶解しなかったものの,機能性モノマーとの複合体はモノマー溶液に溶解し,これにより,有効に分子鋳型を得ることが出来た。どちらか一方のイオン性基のみしか持たない擬似鋳型から得た分子鋳型と比較したところ,有意な選択性の発現を確認した。 ●神経毒・サキシトキシンを用いた検討に関しては,分子内に2つのカチオン性基を有するため,これに類似の擬似鋳型を合成し,上記と同様の検討を行ったところ,相反する上記シリンドロスパモプシンの場合よりも顕著な選択性の発現を確認した。これは,2つの同じイオン性基を分子内に含むために,相反するイオン性基を持つものと比較してイオン性基間の固定化が効率的に出来たことを示している。 2)選択的分離媒体を用いた模擬試料の分析,対象物質の濃縮 本年度は,模擬的に比較的親水性の高い合成物質をモデルとして,2つのイオン性基間の距離の固定化に基づく選択的分離媒体の調製を行い,それらを前処理カラムとして用いるカラムスイッチング高速液体クロマトグラフィーにおいて,その効果を確認した。その結果,汎用性の高い紫外吸収検出器においても,pptレベルの希薄溶液や実環境試料において,安定した定性,定量が可能となることを確認した。通常は困難な分析であるが,得られた分子鋳型の高選択性に基づき,このような成果が得られたものと考えている
|