Research Abstract |
平成17年度の実施計画に基づき,下記の研究実績を得た。 1)官能基間距離固定化法による選択的分子認識部位の創製 対象物質を選択的に認識するために,いくつかの候補疑似鋳型を用いて,分子認識部位を調製し,その性能の検討を行った。イオン性の毒物に関しては,その認識が容易であったが,単純な物質であるジェオスミンに関しては,種々の検討を行った結果,いくつかの候補疑似鋳型に絞り込むことができた。 また,それらの分子認識部位を実際の環境中で使用できるように,共連続構造を持ったモノリス型分離媒体,また,大細孔を有する発泡状分離媒体中に共存させる手法について検討を行い,モノリス型分離媒体の場合には,新たに開発した粘弾性相分離法(特許出願中)という手法を用いることで,充分な流速を実現できる貫通細孔を有しながら,かつ,特定の分子を選択的に認識する部位を共存させることに成功した。また,発泡状分離媒体においても,新しい手法で,分子認識部位と発泡状分離媒体を共存させる方法を見いだすことに成功した。 2)選択的吸着媒体を用いた環境試料の分析,対象物質の濃縮 粒子状の選択的吸着媒体を濃縮媒体として用いることで,実環境水中の特的物質を1pptのレベルまで,簡易型高速液体クロマトグラフィーで定量することに成功した。実現した検出感度は,今まで同装置では達成し得なかった高感度であり,環境分析のみならず,微量分析においても極めて意義の大きな成果であると考えている。この分析系を用いることで,従来は検出が困難であった,超純水中に含まれる微量の汚染物質の定量に成功し,その製品化決定に貢献できた。 3)生分解性吸着媒体の開発 ネットワーク状ポリエステルを基とした発泡状生分解性吸着媒体を開発し,それらに富栄養化成分を吸着することが可能なナノ分子認識部位を賦与し,実際の環境水の処理を行った。その結果,極めて効率的に目的物質を吸着除去できることが分かり,実用化に向けてさらなる検討を進めている。
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