Research Abstract |
従来の触媒抗体の多くは,単一の触媒因子(遷移状態の安定化)で反応を触媒するため,活性が低い.一方,天然酵素は,「遷移状態の安定化」に加えて,「補酵素」や「一般酸-塩基触媒」などの触媒因子を組み合わせることにより,高い活性を示す.すなわち,このような触媒因子の組み合わせを抗体タンパク質に導入することにより,複数の触媒因子(遷移状態の安定化の他に求核触媒や一般酸塩基触媒)を協働させるための方法論を開発し,高活性な触媒抗体を創出する.本年度は,基質および合成コファクターの両方に親和性をもつ抗原結合部位を構築するために設計したハプテン(遷移状態アナログ)を免疫し,得られたモノクローナル抗体について詳細を検討した. (1)昨年度に獲得した,22種のモノクローナル抗体についてまず,アルコールとエステルを用いてエステル交換反応を行った.その結果,最も活性の高かった2種の抗体,25E2および27C1について詳細を検討することとした.基質濃度を変化させ,反応速度を測定して,Michaelis-Mentenの式により反応速度パラメータ(K_<cat>,K_m)を決定した(For 25E2 : K_<cat>=0.044min^<-1>,K_m(ester)=9.6mM,K_m(alcohol)=87mM ; For 27Cl : k_<cat>=0.024min^<-1>,K_m(ester)=2.7mM,K_m(alcohol)=86mM). (2)化学的部位特異的変位および反応メカニズムの決定:上記のアシル交換反応は,コファクターとしてアルコールの他にアミン,チオールを加えたときにも反応が加速された.また,基質として,アミド化合物を用いたときにも同様に反応は加速された.また,各種速度論データから,反応はランダム機構で進行することが示唆された.
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