2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16360034
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 康志 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (60294047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 守 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (70237949)
藤田 克昌 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80362664)
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Keywords | 近接場ラマン分光 / 表面増強ラマン散乱 / 密度汎関数法 / カーボンナノチューブ / 局在プラズモン / ファン・デル・ワールス力 / 近接場光学 / ナノサイエンス・テクノロジー |
Research Abstract |
ナノ材料の代表格であるカーボンナノチューブ(CNT)にファン・デル・ワールス力を印加することで特定のラマンバンドだけがシフトする現象を見出し、解析した。具体的には、単一のCNTバンドルに、原子間力顕微鏡用のカンチレバーに銀をコーティングした金属ナノ探針で応力を印加しながらチップ増強近接場ラマンスペクトルを測定し、CNTのラマンバンドの変化をin situで観察した。応力を0nNから2.4nNまで段階的に印加していくと、CNTの電気的性質を反映するG-bandと呼ばれるラマンバンドに対応する1600cm^<-1>付近に観測される2つのピークのうち、低波数側のピークは18cm^<-1>だけ低波数側にシフトした。一方、高波数側のピークは変化しなかった。この現象は、2つのピークが振動方向の異なる振動モードに対応し、それぞれの振動方向によってせん断応力が異なることに起因すると考えている。さらに、200cm^<-1>〜300cm^<-1>付近に観測されるCNTの直径に依存した振動モードであるRadial Breathing Modeのピークは最大で5cm^<-1>だけ低波数側にシフトすることを観察した。この低波数シフトは、探針によって一軸性の応力がカーボンナノチューブに印加されたことにより、カーボンナノチューブの断面が楕円形に歪んだことに起因すると考えている。また、応力を印加するとすべてのラマンバンドのラマン散乱光強度が増幅することも観察した。これはCNTが直径方向に歪むことで、バンドギャップエネルギーが共鳴エネルギー(2.33eV)に近づき、共鳴ラマン効果の寄与が大きくなったことを示唆している。 さらに、複数の金属原子により形成されるクラスターと分子とによる錯体の振動計算を密度汎関数法により行った。その結果、銀原子数が4つ以上あれば、錯体形成によるバンドシフトが実験値にほぼ一致することを確かめた。
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