Research Abstract |
本研究は,風と地震動による雑音が介入する柔軟構造物の入出力データから,部分空間同定法に基づく構造物の数学モデルの導出と,その振動を抑制するためのアクティブ制御アルゴリズムの構築を目的としている. 本年は初年度にあたり,同定アルゴリズムの提案と,シンプルな実験モデルを用いた提案アルゴリズムの有効性の検証を行った.また制御システムの構築を行い,実験モデルの制御を行った.以下に具体的な内容を述べる.同定アルゴリズムは,申請者らがすでに提案している,部分空間同定法に基づき入出力データより直接連続時間モデルを導出するアルゴリズムであり,柔軟構造物の同定を行うに際して,構造物のパラメータの同定,計算精度の向上を目的とした数点の変更を行い,その有効性は,数値シミュレーションにより検証した.実験モデルは,1軸の柔軟構造物のスケールモデルとして地上200メートル50階建て,一辺が40メートルの高層ビルを想定し,その1/200のモデルを,風外乱と地震外乱に対して元となる構造物と模型が相似な振動を行うよう剛性設計を行った.また上記構造物に振動を与えるための振動台は,実際に観測された地震振動を正確に再現するため,加速度フィードバックサーボシステムを構築した.実験モデルの挙動は,構造物の各階に取り付けられたマーカーを振動台上のCCDカメラ4台で撮影し,カメラ設置層(地面)と各階の相対変位を測定することにより,変位データとして計測した.以上のシステムを用いて,振動台による基礎加震を入力,各階の変位を出力として構造物の数学モデルを状態空間表現として同定し,その結果は,現在構造物の同定で広く用いられている手法による結果と比較を行い,その有効性を確認した.振動制御については,上記のシステムに加えて構造物モデルの最上階に小型のリニアモーターを用いたAMDを設置し,これを制御入力としたLQGによる制震実験を行った.制御時/非制御時の各階変位の比較を行い,構造物の挙動が適切である点,および制御後の変位が30%程度に収まっている点より,本システムとモデルが柔軟構造物の制震実験に十分適用可能であることを確認した.
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