Research Abstract |
非線形光学結晶を用いた波長変換技術は,レーザ精密微細加工,特に全固体レーザの応用に重要な技術である.波長変換は繰り返し照射下で多く用いられるが,繰り返し照射下での高調波発生に関する従来の研究・開発は,実験的・経験的立場がとられており,理論的な研究は1パルス照射を対象としたものしかみられない.波長変換に不可欠な位相整合は結晶の温度に敏感で,温度変化があると変換効率が低下する.繰り返し照射下では,レーザ吸収の影響があるため結晶の温度変動が生じる.よってこれが波長変換に与える影響を解析するには,1パルス照射を想定した従来の理論解析では不可能である. このような研究背景,問題に対し,本研究では,繰り返し照射におけるレーザ吸収による熱の影響を考慮した理論的解析を行った.従来の複素振幅方程式は,レーザ光吸収を考慮していない.そこで,まず第二高調波発生について,レーザ吸収を考慮した高調波発生の支配方程式を新たに導き,熱伝導方程式と連成した解析モデルを構築した.非線形光学結晶には,KDP結晶,KTP結晶を想定した.入射基本波の強度が一様分布とガウス分布の場合について,繰り返し照射における結晶の温度上昇に伴う変換効率の低下と変動,出射パルスのビームプロファイルの乱れなどについて,理論解析した. その結果,繰り返し照射下での第二高調波発生は,定常的なものではなく,高強度レーザであればあるほど出力が不安定になることを定量的に示した.また,最も制御しにくい結晶内部中心領域で温度が上昇しやすいことがわかった.さらに,極短時間の1パルス内でも,出射パルス波形が時々刻々変動すると同時に,空間的なプロファイルも複雑に変化することなどを明らかにした.これらは,パルス幅が短くなるほど実験的に確認するのが困難であり,本研究の解析法およびその結果は有用であるといえる.
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