Research Abstract |
本研究は,上肢切断者の運動機能再建を支援するために,切断者に残されたあらゆる可能性を自動的に探索し,さらに,新しい機能を開拓するような能動型適応システムの構築を目的として行なった.平成17年度においては, 1)個性適応機能を有するモバイル義手システムを構築し,長期(6ヶ月)の連続試用実験を開始した. 1-1.この実験を行うために開発したモバイル義手システムは,パラレルワイヤー干渉駆動を2-5指のMP関節にも適用し,16年度に開発した拇指と手首を合わせて,全指による握力を飛躍的に増大させた.結果としては,全指による握力が10kgw以上となり,日常生活における必要十分な片手での保持機能を実現した. 1-2.接触の有無をフィードバックするために,小型の電気刺激装置を開発し,義手コントローラシステムへの組み込みを行った. 1-3.Hitachi製マイクロチップM32Cを用いて4動作識別器を作成し,義手コントローラシステムのモバイル化を行った. 1-4.これら,刺激装置,コントローラ,義手メカ部の全システム一式をまとめて製作するための手続きを整備した. 1-5.ここで開発したモバイル義手システムを上肢前腕切断者(50代女性)に適用し,連続試用実験を開始しており,現在6ヶ月を経過して,日常生活の補助具としての役割を果たしている. 2)モバイル義手の有する個性適応機能が使用者(被験者)に与える影響を調べるために,f-MRI(機能的磁気断層撮影装置)による解析を適用し,使用前と使用後の被験者の大脳一次感覚運動野および,頭頂連合野の賦活状態を定量化した.その結果,錯覚と適応の現象が顕著に見られることが判明し,その差が接触のフィードバックの有無に関係があることがわかった. これらの研究成果は,英文誌および国際ワークショップ,新聞報道,テレビ報道などに発表した.
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