Research Abstract |
電気学会調査専門委員会で用意した協同試験試料を用い,他機関での研究結果との比較を行いながら,本研究で提案する材料評価方法の多面的な検討を行った。その結果, 1.高電界誘電特性解析システムの改良を行い,シリコーンゴムシートなどの厚さ数mmの試料を用いても,その誘電率・tanδ・交流損失電流等の高電界誘電特性を計測可能なシステムを構築できた。 2.くし形電極系をシート状試料の片側表面に設置して,電極間隔に比例した試料表面からの深さ方向(厚さ方向)分解能を有する誘電計測を可能とし,電極に非接触な部分の誘電特性の違いを検出できた。 3.撥水状態の画像解析は,誘電計測結果と対比させることにより,試料表面における劣化状態と試料内部に至る劣化状態の分離計測を可能とする大切な指標を与えることが示唆された。 4.シリコーンゴムへのATHなどの充填材の影響は,その表面処理を含めて,誘電計測により明白に区別できた。 5.レーザ顕微鏡を用いた試料表面粗さの計測により,上記の充填量やその表面処理の違いなど,試料の区別は可能であった。しかしながら誘電計測では可能であった試料の吸水・乾燥状態の表面粗さによる確認は困難であることが示唆された。 6.サーモグラフィを用いた試料表面温度の,試料撥水性能評価結果への影響を検討した結果,撥水状態が低下してくると,測定温度の低下は撥水指標のより大きな低下をもたらすことが明らかとなった。 7.撥水性に関しては,撥水状態が良好な場合は接触角の測定が,撥水性が低下してくると,スプレー法による撥水画像解析が,より効果的であることが示唆された。 今後,試料表面漏れ電流と試料内部の導電電流,試料内部の誘電分極に関係した電流,試料面の撥水性等について,その「測定温度の影響」をより詳細に検討し,実機器の劣化診断における,「測定温度による補正係数」について検討していくことが望まれる。
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