Research Abstract |
地雷探知の代表的なものは金属探知器および地中レーダ探知器である.金属探知器は最もよく使われており金属製の地雷を探知するには十分であるが,プラスチック製の地雷の探知はきわめて困難となっている.そのため金属探知器の探知感度を上げて探知をおこなう場合は地中や地表上の微小な金属片にも反応してしまい,探知作業効率が極端に低くなってしまう.一方,地中レーダ探知器は地雷の材質に関係なく探知が可能であるが,地雷からの微弱な反射波が強力なクラッタに埋もれてしまい,目標物体の微弱な信号検出に問題がある.長崎大学の研究グループでは平成16年度は,比誘電率3の乾燥した砂による地雷フィールドを作成し,金属製の地雷を想定した直径3cm,長さ5cmの金属円柱や,プラスチック製地雷を想定した直径7cm,長さ5cmの円柱(ロウソク:比誘電率2.6)を埋設し,模擬地雷の真上を通る直線状の観測ライン上でのパルス応答を観測した.得られたパルス応答に対して我々が提案した2次元の合成開口処理を行い,現有のレーダ装置に対する地雷探査の限界を確認した.平成17年度は埋設した模擬地雷の真上を通る観測ラインだけでなく,真上の観測ラインに±数センチだけ離した数本の観測ライン上でパルス応答を観測し,3次元合成開口処理を行った.3次元合成開口処理では,2次元合成開口処理では識別が困難であった模擬プラスチック地雷でも,精度良く推定できることを示した.また,3次元合成開口処理に必要な観測ラインの間隔について議論した.熊本大学の研究グループでは,平成17年度は,平成16年度に開発した検出・識別アルゴリズムと予備実験の結果を基に,実際に地雷識別器のプロトタイプの作成を開始し,性能評価を行うとともに,シミュレーションによりその有効性・信頼性・安定性の検証を行った.同時に適用限界についても明確にした.まず,センサ用のアンテナシステムを構築し,これを用いたモデル実験による有効性の確認を行った後,FDTD法による数値シミュレーションにより地雷識別能力,ロバスト性,処理速度などの詳細な性能評価を行った.地雷の種類,地面の粗さ,地雷の深さ,土壌の誘電率や導電率(含水率)など,種々のパラメータの変化に対する識別性能の変化を定量的に評価し,総合的な検出・識別性能と適用限界を明らかにした.
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