Research Abstract |
(1)佐賀県小城町周辺での強風発生に関する数値流体解析 前年度に引き続き,数値流体解析プログラム(RIAM-COMPACTとSTAR-LT)を用いて佐賀県小城町の局所風の発生について種々パラメータを変えて検証を行ったところ,現状の風況シミュレーションソフトでは,概ね,強風発生機構を数値的に再現することが可能であることがわかった。しかしながら,初期条件(風速流入条件)に対する感度が高く,実際の高層気象データを正確に用いなければ,現場での観測データとの乖離が大きく,流体解析ソフトを使用する上で気象観測データの集積が不可欠であることを示した。 さらに,コンピュータシミュレーションによる瞬問風速の再現は,実際の観測データとは大きく異なり,とくに,高周波成分の再現は現状のままでは不可能に近く,最大瞬間風速の予測シミュレーションの実現には理論と計算手段のさらなる工夫が必要である。 (2)谷筋山稜模型を超える接近流の風速分布形状の数値流体解析 上記と同じ手法を用いて,谷筋山稜模型を超える接近流の風速分布形状による強風発生のパラメータスタディを行って,その強風発生メカニズムを検証したところ,概ね風洞実験結果に一致した。これは,対象にした流れ場が乱れの小さい一様流に近い状況であり,いわば平均風速場シミュレーションの実用性が十分であることを確認した。また,本研究での使用した方法で,小型風洞での温度勾配を持つ熱成層流の生成が可能になり,温度勾配に声のよる山麓付近での強風域発生に及ぼす影響を検討したところ,温度勾配すなわち大気安定度が山稜強風域発生に強く影響することがわかった。 (3)1998年3月に局所的な強風発生が見られた福岡市西部地区について検証したところ,中立状態でも周辺よりやや強い風が見られるが,フルード数1.6程度の大気温度層の影響を考慮した方が,同地域での観測状況により近くなることがわかった。 (4)周辺地形と温度層の相乗効果による強風発生の領域と増速現象の発生事例を示し,いくつかの強風災害との関連をとりまとめて,これまでの研究を総括した。
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