2004 Fiscal Year Annual Research Report
水素燃料電池車用高圧水素ガス容器の安全性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16360344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 幹宏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60011128)
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Keywords | Al-Mg-Si系合金 / 水素脆化 / Si過剰合金 / Siリッチ相 / 低歪速度試験 / 酸化被膜 / 高周波スパッタ / 電気化学的透過法 |
Research Abstract |
燃料電池車用圧縮水素容器のライナー材に用いられるAl-Mg-Si系合金の組成・熱処理と水素脆化との関連を、高圧水素ガス下での試験より過酷な試験となる高湿度下での低歪速度試験により検討した。Mg/Si=2となるバランス組成、これにCuを添加した合金、およびMg/Si<2としたSi過剰合金について、175℃で以下の時効処理を行った:亜時効(30分)、ピーク時効(1000分)、過時効(10^4分)。亜時効・ピーク時効条件下ではMg/Si=2のバランス合金およびCuを添加して高強度化した合金は、10^<-7>/sで試験してもいずれも10^<-4>/sの場合より延性が低下せず、水素脆化しないことが判明した。これに対し、Si過剰合金では10^<-7>/sの場合には高歪速度試験の場合より延性が低下し、粒界割れを呈して水素脆化する事が明らかになった。高強度Al-Zn-Mg-Cu系合金などでは亜時効で最もSCC・水素脆化の感受性が高いが、本系合金は時効が進むほど脆化が顕著となり、過時効材で最も水素脆化が顕著となった。その過時効条件下での破面を観察すると、浅いディンプルの底に微細な粒子が認められ、EDS分析の結果によればSiに富む析出相であることが判明した。よってSi過剰合金で粒界割れを伴って水素脆化するのは、この粒界上のSiリッチ相が関連していると考えられた。 低歪速度試験の際、環境から侵入する水素量が試料の組成・熱処理により相違するかどうかを調べるため、まず導入した高周波スパッタ装置を用いて試料表面のアルミナ被膜除去を可能とする実験条件の確立を行った。次に、酸化膜除去直後に高真空下でNiをスパッタコーティングした試料に陽極水素チャージを行い、試料中への水素導入に成功したことを昇温式水素脱離分析により確認した。しかしながら微量電流の測定に成功しておらず、電気化学的透過法における検出回路の高精度化などの検討を行いつつある。
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