2005 Fiscal Year Annual Research Report
水素燃料電池車用高圧水素ガス容器の安全性に関する基礎的研究
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16360344
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅野 幹宏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60011128)
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Keywords | Al-Mg-Si系合金 / 高湿度雰囲気 / 低歪速度試験 / 水素脆化 / Si過剰合金 / Siリッチ相 / 界面剥離 / ライナー材 |
Research Abstract |
標記容器のライナー材に用いられるAl-Mg-Si系合金について、70〜100MPaで使用可能とする目的で研究を行った。まずMg、Si量がA6061合金などに近い比較的低組成のAl-Mg-Si系合金の粗粒ピーク時効材を用いて高湿度下での低歪速度(1.7x10^<-7>/s)試験を行った。Mg:Si=2:1となるバランス組成では、Cuを添加して高強度としても低歪速度試験の場合に通常の歪速度での試験の場合より延性が低下する水素脆化現象が観察されなかった。一方、Si過剰合金では水素脆化現象が明瞭に観察され、脆化は時効の進行と共に顕著となったが、結晶粒径を1/2程度にすると不明瞭となった。水素脆化試料の破面にはSiリッチ相が観察され、水素脆化はSiリッチ相と母相との界面剥離によって生じたと考えられた。 次に自動車のボディ用に開発された市販の高強度合金A6066、A6013、A6070合金は、現用のA6061合金と同様、水素脆化を生じなかった。その原因究明のため、A6066合金なみにMg_2Si量を増加させた合金を作製して低歪速度試験を行った。Si過剰量が0.8%と多いにも拘らず高組成合金は水素脆化を示さず、通常歪速度試験より低歪速度試験の場合の方が延性は大となった。これは高組成合金で生じた高密度の針状G.P.ゾーンおよび粒界上のSiリッチ相などが水素をトラップした結果、粒界上におけるSiリッチ相/母相界面における水素濃度が低下して、粒界への応力集中下でも早期に界面剥離を生じにくくなるためと考えられた。またCuを約0.9%添加した高組成合金では、強度が増加し延性も向上して、水素脆化も生じなかったが、これにはCu添加による粒界上Siリッチ相の微細化効果が寄与していると推察された。以上から自動車のボディ用に開発された高強度合金は、より高圧の水素充填容器のライナー材として有望であると判断された。
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Research Products
(3 results)