Research Abstract |
チタンの多孔質皮膜形成に関して,リン酸塩を含む高温グリセンリン溶液中におけるアノード酸化では,チタンの溶解と共に,酸素ガス発生が盛んに起こることが確認された。ガス発生は酸化膜の結晶化と関連することを以前明らかにしていたため,その結晶化を抑制するために,チタンをケイ素と合金化したところ,10nm程度のポア径を有する自己規則化多孔質皮膜を形成することに成功した。同様な多孔質皮膜はニオブでも形成し,この場合皮膜生成反応は拡散支配になることから,溶液中に含まれる微量水分が反応種であり,酸化膜の酸素供給源であることを明らかにした。 多孔質皮膜の形成では,一般的にはフッ化物系水溶液が用いられているが,生成した酸化膜の密着性が悪いといった問題点がある。これは,フッ化物イオンが皮膜成長時に皮膜/素地界面に濃縮することと関連していると推定されていたが,本研究では,Ti-Si合金上にバリア型アノード酸化皮膜を生成する際にフッ化物イオンが高速で素地側へ移動し,素地との界面に濃縮することを確認した。さらにその移動速度がO^<2->イオンの2倍であることを初めて明らかとした。 バリア型チタンアノード酸化皮膜の結晶化抑制に関して,Ti-Si合金のシリコン添加量を増やすと大気酸化皮膜中のシリコン濃度が増え,これにより結晶化の起点となる大気酸化皮膜の改質が生じ,結晶化が起こらなくなることを確認した。また,このアノード酸化皮膜を熱処理すると,250℃で外層のシリコンを含まない層が結晶化するが,リン酸アニオンなどを電解液から封入することで熱結晶化も抑制できることを明らかとした。 アルミン酸塩を含む電解液中で火花放電アノード酸化皮膜を行うことで,チタン,Ti-6Al-4VおよびTi-15V-3Al-3Cr-3Snの実用チタン材料へ硬質アノード酸化膜を形成することに成功し,リン酸塩の添加により膜厚や多孔度を制御できることを示した。
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