Research Abstract |
半導体シリコン融液におけるマランゴニ対流の不安定性のメカニズムについては,未だに十分に解明されてはいない.特に,不安定化を生ずる第1臨界マランゴニ数から第2臨界マラゴニ数の領域に代表される,低マランゴニ数領域での挙動については充分な情報が得られていない.また,マランゴニ対流の駆動力は表面張力の温度係数であるが,これは酸素分圧に極めて依存する.しかしながら,シリコン融液と雰囲気酸素分圧との関係についても充分に解明されているとは言えない. 本年度は,1)低マランゴニ数におけるマランゴニ対流不安定化のメカニズムについてシミュレーションにより,また,2)これまで用いてきたシリコンでは,実験的に低いマランゴニ数を実現することが困難であったので,これに代わって溶融銀を作動流体として用いて実験的に低マランゴニ数領域の流れを解明すべく準備をおこなった.3)シリコン融液と雰囲気酸素との関係について,電磁浮遊を用いて,シリコン融液の表面に酸化被膜が生成する条件(過冷却および酸素過飽和状態)を詳細に調べた. 1)部分的に開放部を設けて表面を固体壁で覆ったハーフ・ゾーン液柱を用いて,マランゴニ対流不安定化のメカニズムを,数値シミュレーションによって調べた.この結果,不安定化のメカニズムとして従来から報告のある楕円型不安定性に加えて,遠心力不安定性も重要な役割を担っていることが明かになった. 2)アルミナロッドに白金板をはめ込み,白金板と銀との濡れ性を利用して液柱を形成した.当初,銀融液の表面に硫化物が形成され自由表面が形成されないことがあったが,炭酸水素ナトリウム融液でエッチングすることにより,この問題を解決でき,マランゴニ対流による温度振動を検出することに成功した. 3)無容器浮遊させたシリコン融液が雰囲気酸素分圧によって酸化される際,平衡条件から温度で約80Kの過冷却が,また,酸素分圧では1桁の過飽和状態を伴うことを実験的に確認した.
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