Research Abstract |
水素/酸素燃料電池反応を利用した隔膜反応法による過酸化水素の一段合成法を開発するために,本反応法を支配する様々な因子を解明し,理論立て,最終的に高活性化することを目標している。本反応法はカソード,アノード,2枚のガス拡散電極を隔膜としても機能させ,この電極間に電解質溶液を満たす特異的な構造を有している。電解質液側と反対の電極面は,酸素ガス(カソード),水素ガス(アノード)に露出しており,高分圧の酸素ガス,水素ガスが高濃度のまま直接反応サイトに供給できることが特徴である。作年度は電解質に2モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液,炭素ガス拡散電極(VGCF+XC-72)を用い,最大10重量%の過酸化水素水溶液を選択的に合成出来た。硫酸酸性電解質溶液(0.5モル/リットル)を用いた場合,マンガンポルフィリン誘導体/活性炭-電極触媒が過酸化水素生成活性を有することを見出した。 本年度は,金属ポルフィリン誘導体/炭素電極の触媒作用について詳細な検討を行い,より高活性,高選択性のカソード触媒の開発を行った.マンガン・テトラフェニルポルフィリンを活性炭上に含浸担持し,不活性ガス中300から600℃で熱処理活性化すると,過酸化水素生成活性を発現した.各種マンガンポルフィリン触媒の中では450℃で活性化したマンガン・オクタエチルポルフィリン/活性炭が最も有効であり,電流効率45%で3.5重量%の過酸化水素硫酸水溶液の合成に成功した.この過酸化水素溶液は,炭化水素の酸化剤として充分に機能する.熱処理活性化マンガン・ポルフィリン/活性炭の酸素分子還元機構について,CV,RRDE,FT-IR及びXAFSを用いて詳細に検討した結果,(1)不活性ガス中での熱処理活性化により,ポルフィリン骨格の一部(フェニル基,又はエチル基)が脱離,また軸配位子の塩素イオ≧が脱離し,ポルフィリン環は炭素表面と強く相互作用している,(2)マンガンは2価として作用している,(3)酸素分子への2電子移動反応により過酸化水素が生成している,ことが明らかとなった.
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