2005 Fiscal Year Annual Research Report
花粉表層構造の形成と稔性獲得に関する分子遺伝学的解析
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16370020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 澄衞 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (50260039)
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Keywords | シロイヌナズナ / 花粉 / エキシン / ポレンコート / ステロール |
Research Abstract |
1.エキシン形成機構の解析 シロイヌナズナのshd突然変異体が作る花粉はエキシンの形態が異常である。この原因を明らかにすることを目的に、各種のプロモーターにSHD遺伝子をつないでshd突然変異体で発現させ、いつどこでSHD遺伝子を発現させたらエキシンの構造が回復するかを解析した。同時に、花粉の稔性が回復するかどうかも観察した。その結果、ステージ9以降のタペート細胞で発現するプロモーターにつないでも、ステージ10以降の小胞子・花粉で発現するプロモーターにつないでもエキシンの構造を回復させることはできなかった。他の解析結果と合わせ、エキシン形成にSHDが必要とされる時期は、花粉四分子が形成されるさらに若い時期(ステージ8)のタペート細胞であると推定した。一方、花粉稔性に関しては、タペート細胞でSHDを発現させても回復しなかったが、花粉で発現させた場合には多数の自殖種子の形成が見られるようになった。花粉が柱頭に認識されるのにエキシンが重要であると指摘されていたが、この結果から、エキシンの構造が不完全でも柱頭に十分認識されることがわかった。 2.ポレンコート形成機構の解析 メバロン酸経路の酵素HMG-CoAシンターゼがタペート細胞で発現しなくなったfkp1-1突然変異体はポレンコートをほぼ完全に欠いている。しかしながら、タペート細胞中にはステロールを蓄積するエライオプラストが不完全ながら形成されており、実際ステロールの生合成も認められた。メバロン酸経路のバイパスであるMEP経路は通常ステロール生合成には関与しないとされているが、メバロン酸経路が欠損した場合にはある程度相補的な機能を持つのかもしれない。 3.葯の乾燥と花粉の稔性獲得との関連 葯の裂開が起きない突然変異体では、形成される花粉が稔性を持たない。顕微鏡観察の結果、表層構造には異常が認められないが、花粉内部の構造が異常になっていた。
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