2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物のリン酸転流機構を生体膜輸送と維管束輸送で理解する
Project/Area Number |
16370024
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三村 徹郎 神戸大学, 理学部, 教授 (20174120)
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Keywords | リン酸 / 転流 / シロイヌナズナ / 生体膜輸送 / 維管束 / ソース・シンク / オオムギ / 排水組織 |
Research Abstract |
リンは,カリウム,窒素とともに,植物成長における三大栄養素の一つである.土壌中には,植物が利用可能な可溶性無機リン酸は極く少量のため,多くの植物は常にリン酸飢餓状態にある.そこで植物は,リンの利用を効率化する様々な生理機構を進化させてきた. 本研究では、その生理機構の一つとして、体内に取り込まれたリン酸が,老化葉組織から若年葉組織、あるいは異なる組織間を移行していくリン酸「転流」機構を,老化葉組織における蓄積リン酸の放出,維管束における輸送,若年葉組織における取り込みの三点に絞り,主にシロイヌナズナを材料に,それぞれの組織,細胞でどのような膜輸送系が機能しているかを明らかにしてきた。 本年は、一枚の葉組織でリン酸輸送機構がどのように発現しているかを、単離した葉肉細胞のアイソトープを用いた取込み実験で確認し、個々の葉肉細胞は、通常の培養条件ではリン酸膜輸送機構が全く発現していないこと、維管束周囲の細胞だけが、特異的にリン酸をはじめとする種々の物質取込機能を持つことを見出した。このことは、若年葉でも老化葉でも大きな違いは無かった。さらに、葉組織で発現するリン酸輸送体が、実際にどのように発現変動していくかを明らかにするために、AtPht1;4とAtPht1;5について、プロモーター部分を含めた遺伝子単離を行い、それにGFPをつないで発現させる形質転換体の作成を進めた。 また、オオムギを材料に、一枚の葉の中で生じるリン酸イオン勾配を確認し、導管内では維管束走向に従った濃度勾配が存在するが、葉組織ではそのような勾配が生じないこと、さらに、導管末端では、排水組織のみでリン酸が強く吸収されることと、吸収されたリン酸が24時間で、根の末端まで再転流することを見出した。同時に、一枚の葉の中におけるリン酸輸送体の発現量の変動をリアルタイムPCRで確認し、オオムギのリン酸輸送体が葉全体にわたってほぼ一様に発現するが、一部輸送体では排水組織で特異的に発現し、それが排水組織の強いリン酸吸収能をもたらしていることを見出した。
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Research Products
(5 results)