2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアの熱帯季節風地域の微小菌類群集の種多様性に関する比較研究
Project/Area Number |
16370041
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
徳増 征二 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (80092526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 裕一 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教授 (00220236)
佐藤 大樹 独立行政法人・森林総合研究所, 九州支所, チーム長 (30353709)
出川 洋介 神奈川県立生命の星・地球博物館, 技師 (00311431)
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Keywords | 微小菌類 / 熱帯モンスーン地域 / 東南アジア / 種多様性 / 最終氷期 / 地史的要因 / 気候要因 / 人為撹乱 |
Research Abstract |
本研究期間中、平成16年度にメンバー全員がタイ北部においてそれぞれの担当分野の菌類あるいはその分離源を採集、持ち帰って観察、分離、同定を行った。また、同年度中に熱帯との比較を行う目的で、同じ季節風の影響を受けるが気温的に暖温帯に属する南西諸島において同様な調査を行った。17年度には、研究代表者が熱帯モンスーン地域南部のマレーシア半島のケダピークにおいて採集を試みた。また、研究分担者が九州の南部および種子島に樹病菌とその関連菌群の調査を試みた。現在分離・同定を継続中であるが、アジアモンスーンの影響下にある熱帯と暖温帯を微小菌類の種多様性という観点から比較した場合以下のような傾向が確認できた。マツ落葉に生息する腐生性微小菌類の種多様性は明らかに熱帯が暖温帯より高かった。また、両者に共通する種の割合は低かった。接合菌類に関しては、熱帯において多くの未記載種の存在が示唆された。暖温帯で夏季に限られた基質から出現する熱帯性の接合菌類の多くは熱帯モンスーン地域において基質の種類の幅が広がり、高頻度で常在することが確認された。暖温帯との共通樹木であるマツ属の樹病菌に関しては熱帯で種数、頻度が低い傾向が認められた。熱帯においては多くの競合者(菌や他の生物)の存在が認められたので、その影響があると考えられる。昆虫寄生菌はいわゆる冬虫夏草類の出現頻度、種多様性とも高い傾向が認められた。また,トリコミケーテス菌類についてはごく限られた宿主について行った調査でも新種が発見され、この地域の種多様性の高さを示唆した。この地域の多様性の高さは最終氷期以降の気候変動による植生の南北移動、温帯性植物が逃避できる高地や高山の分布という地史的、地形的要因に、乾季雨季によってもたらされる季節性という気候的要因、さらに耕作、焼畑などの撹乱という人間による要因が重なって成立していると考えられる。
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