2006 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性バイオインディケーターとしてのアリ類の利用に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16370045
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Research Institution | KYUSHU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
緒方 一夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (40224092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田内 修 九州大学, 大学院農学研究院, 教授 (10150509)
粕谷 英一 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (00161050)
矢田 脩 九州大学, 大学院比較社会文化研究院, 教授 (80038489)
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Keywords | 昆虫 / 分類 / 生物多様性 / 群集 / 保全生物学 |
Research Abstract |
本研究では、アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして用いることを上位の目的に、(1)調査方法の比較検討、(2)分類学的基盤、(3)分析評価方法などの諸問題を研究課題としている。平成18年度では、上記(1)については直接採集法(見取りによるサンプリング)である単位時間調査法の経験の違いによるデータ精度の問題を再検討し、(2)についてはアリ分類体系の最新情報をネット上で公開、(3)については農業生態系のアリ群集について多変量解析による多様性の研究を実施した。 その結果、直接採集法では採集者の経験が収集される種類数に影響を及ぼすが、適切なインストラクションを与えることで累積種数曲線は大きく改善されることが明らかになった。また現在知られている日本産アリ類275種について、調査データの取りまとめに有効に利用されるようにエクセル形式でのダウンロード版チェックリストを公開した。このリストおよび世界のアリの学名についてとりまとめたものを携帯版の印刷物として準備した。この他、分類学的知見として日本産のアギトアリ属、ハリアリ属についての論文を準備中である。 さらに、農業生態系に見られるアリ群集について、土壌の理化学的性質と種数との関係、攪乱の程度と群集の多様性について検討し、サトウギビ畑のような永年性作物圃場では、植え付け後徐々に種数が増加することを明らかにした。なお、アリ類の多様性と他の生物群との多様性の関連を見るため、とくにチョウ・ハナバチ類の分布データをひきつづき整備した。これらより、アリ群集のバイオインディケーターとしての価値は生態系指標、すなわち攪乱や孤立性の程度を表す生物群としての利用可能性が示唆された。
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