2004 Fiscal Year Annual Research Report
新規の癌抑制遺伝子DA‐Rafの同定とその生理的機能の解明
Project/Area Number |
16370058
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
遠藤 剛 千葉大学, 理学部, 助教授 (30194038)
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Keywords | Ras / M-Ras / DA-Raf / MAPキナーゼカスケード / トランスフォーメーション / 腫瘍形成 / 神経細胞分化 / 骨格筋細胞分化 |
Research Abstract |
私たちが新たに同定したDA-RafはA-Rafの新規スプライシングアイソフォームで,A-RafのRas結合部位をもっているが,キナーゼ部位を欠損している.DA-RafはRas(H-Ras, K-Ras, N-Ras)とM-Rasに結合した.DA-Rafは活性型v-K-Rasによる細胞のトランスフォーメーションと腫瘍形成を著しく抑制した.したがってDA-RafはRafの内在性のドミナントネガティブ体として作用することにより,Ras-ERK/MAPキナーゼカスケードシグナリングの新規の阻害因子として機能していると考えられる.Ras-ERKカスケードは,NGFによる神経細胞分化の誘導,ならびに筋特異的MyoDファミリー転写因子の発現抑制を介した骨格筋細胞分化の抑制に働いている.そこでDA-Rafの生理的機能を明らかにする目的で,DA-Rafがこれらの細胞分化を制御しているかどうかを調べた. ラットPC12細胞をNGF刺激すると神経細胞分化が誘導される.この過程でNGF刺激12-60時間後にDA-Rafの発現量が増大することをRT-PCRで示した.NGF刺激6時間以降にERKの活性が低下することが報告されていることから,このDA-Rafの発現量の増加がERKの活性の低下につながっていると考えられる.またDA-Rafを過剰発現させたPC12細胞では,神経細胞分化が著しく阻害された.以上の結果から,DA-RafがERKカスケードに拮抗して神経細胞分化を抑制的に制御している可能性が示された.一方,マウス骨格筋C2C12細胞の分化の過程では,DA-Rafの発現はMyoDファミリー転写因子myogeninの発現に同調して著しく誘導された.DA-Rafを過剰発現させたC2C12細胞ではmyogeninの発現が促進された.それに対し,DA-RafのsiRNAを発現させた細胞ではmyogeninの発現が顕著に阻害された.したがってDA-RafがERKカスケードに拮抗してMyoDファミリー転写因子の発現を促し,骨格筋細胞分化を促進していることが示された.
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Research Products
(4 results)