2005 Fiscal Year Annual Research Report
NMR顕微鏡、赤外線放射温度計等による植物の凍結挙動の可視化と凍害回避機構の解析
Project/Area Number |
16380030
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
石川 雅也 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物科学研究領域耐環境ストレス研究ユニット, 上級研究員 (90355727)
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Keywords | NMR顕微鏡 / MRI / マイクロイメージング / 氷核活性 / 耐寒性 / 過冷却 / 植物の凍結挙動 / 赤外線サーモグラフィ |
Research Abstract |
耐寒性の高い植物組織は、凍結融解の反復に耐える。氷は特定の部位だけにでき、細胞の中は決して凍らない。全く凍らないで安定して過冷却する組織もある。このような植物の凍り方(凍結挙動)は種や組織に固有で、耐寒性、凍害回避の重要な機構の一つである。平成17年度は、W.S.Price氏らと共同で既に確立したNMR顕微鏡を用いた水の密度画像解析法により、果樹等の花芽の微細凍結挙動を解析した。また、シュロなど過冷却で耐寒する葉の凍結挙動を詳細に解析し、その機構を解析した。 1.NMR顕微鏡を用いた越冬時発育段階の異なる花芽の凍結挙動の可視化と再分類 ウメは冬季花芽が発達し、開花するが、凍結挙動の解析例は殆どない。2月初旬の発達中のウメ花芽の微細凍結挙動をNMR顕微鏡を用いて観察した。これにより、雄蕊と花弁は安定して過冷却することが判った。また、がく、花托、花梗から枝の皮層にかけての組織は-7℃までに凍結していた。がくは氷晶が蓄積し、IceSinkになっていた。雌蕊は全体が過冷却したが、不安定で-7℃以低で凍結した。これは冬季雌蕊だけが凍害を被る原因と考えられる。ウメ花芽の凍結挙動は、新規のものであった。雄蕊やその変形である花弁が過冷却する点は、ナニワズやアメリカハナミズキに似るが、雌蕊全体が過冷却する点が異なる。 2.シュロの葉における深過冷却をDTAにより解析した。深過冷却の程度は凍結融解や乾燥復水処理やメタノール抽出などにより低下した。メタノール抽出画分には、抗氷核活性が検出され、過冷却を安定させる作用があった。このような活性が構造要因の他にシュロ葉の深過冷却に関与する可能性が高い。 3.赤外線サーモグラフィによる凍結挙動解析 12月初旬の鉢植え植物体の凍結挙動を低温室人工環境下で、サーモグラフィにより解析した。サーモグラフィの感度が不十分なため、含水率の高い時期の枝を選んだ。凍結は枝の上下から開始され、枝全体へ、そして最後に葉へと広がった。この凍結開始の順序は、各器官の氷核活性の高い順と一致し、凍結開始における氷核活性の重要性が判明した。
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Research Products
(5 results)