2006 Fiscal Year Annual Research Report
NMR顕微鏡、赤外線放射温度計等による植物の凍結挙動の可視化と凍害回避機構の解析
Project/Area Number |
16380030
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
石川 雅也 National Institute of Agrobiological Sciences, 植物科学研究領域耐環境ストレス研究ユニット, 上級研究員 (90355727)
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Keywords | NMR顕微鏡 / MRI / マイクロイメージング / 氷核活性 / 耐寒性 / 過冷却 / 植物の凍結挙動 / 環境ストレス |
Research Abstract |
耐寒性の高い植物組織は凍結融解の反復に耐え、氷は特定部位だけにでき、細胞の中は決して凍らない。全く凍らないで安定して過冷却する組織もある。このような植物の凍り方(凍結挙動)は種や組織に固有で、耐寒性の重要な機構の一つである。平成18年度はバラ科越冬花芽、ササ葉等の微細凍結挙動とその機構を解析した。 1.NMR顕微鏡を用いた越冬時発育段階の異なる花芽の凍結挙動の可視化と再分類 モモ花芽は、ある程度発達した一個の小花が芽鱗片に囲まれた状態で越冬する。リンゴ、ナシ花芽では、未発達の多数の小花が芽鱗片に囲まれて越冬する。これらの花芽の微細凍結挙動をNMR顕微鏡で観察した。モモでは芽鱗が-7℃までに凍結し、小花全体は-18℃まで過冷却した。リンゴ、ナシでは、小花は芽鱗と同様に-7℃までに凍結した。組織の氷核活性を調査したところ、ナシやリンゴの小花は高い氷核活性を有したが、モモ小花は全く活性がなかった。バラ科果樹でも種により凍結挙動が異なること、氷核活性が凍結挙動の決定要因の一つであることが示唆された。 2.凍結部分と未凍結部位の境界バリアの解析(なぜ隣接する組織で凍結が伝播しないか?) レンゲツツジとエゾナニワズ花芽を用いて、バリア部分を形態観察した。レンゲツツジでは過冷却する小花と凍結する芽鱗は隣接するが、分化した維管束で連結され、特別な境界は見られない。ナニワズでは葯(過冷却)とがく筒(凍結)は花糸で連結するが、花糸には管状要素がなく維管束は未分化状態で、がく筒内の発達した維管束と好対照である。維管束の発達度合と凍結伝播は、必ずしも関係ないと考えられた。 3.ササ葉等の深過冷却能力の調査 温帯性及び熱帯性ササ、タケ類30種の耐寒性及び深過冷却能力を調査した。スズタケ、チシマザサの葉が最も耐寒性(-25℃)が高く、熱帯性タケは-5℃にも耐えなかった。これらは、ササタケ類の葉が過冷却による耐寒性機構を発達させたことを示唆する。
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Research Products
(12 results)