Research Abstract |
Autographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)はpcna遺伝子をゲノム上にコードしている.このPCNAのウイルス増殖における機能解析を目的として,これまでにpcna遺伝子欠損組換えAcMNPV(vΔpcna)を作出した.今回は,vΔpcnaの8種の鱗翅目昆虫培養細胞における増殖性について調査した.その結果,vΔpcnaをSf9,Tn368,Se301,BmN-4,Ld652YおよびSpLi細胞に感染させた場合の増殖性は,野生型AcMNPVを感染させた場合とほとんど違いが認められなかった.これまでにSf9細胞を用いた実験で,AcMNPVは宿主のPCNAを利用していることを明らかにし,Tn368,Se301,BmN-4,Ld652YおよびSpLi細胞においても同様に,宿主のPCNAを利用していることが予想された.一方,SpImおよびHuCu細胞に感染させた場合には,vΔpcnaと野生型AcMNPVの間で顕著な違いが観察された.すなわち,野生型AcMNPV感染では細胞病変効果が観察され,細胞の増殖はほとんど認められないのに対し,vΔpcna感染では一部の細胞に細胞病変効果が認められるにとどまり,その一方で顕著な細胞数の増加が観察された.そこで,SpIm細胞におけるvΔpcnaの増殖性を,ウイルスDNAの複製,ウイルスタンパク質の合成,子孫ウイルスの産生を指標に調査した結果,vΔpcnaのSpIm細胞に対する感染力は野生型と比較して著しく低下していることが明らかとなった.同様の結果がHyCu細胞においても観察された.以上の結果から,AcMNPVのPCNAは細胞特異的にウイルス増殖において機能していることが示唆された.今後,さらにウイルスの増殖性と宿主DNA複製との関係について解析を進めていく計画である.
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