2006 Fiscal Year Annual Research Report
微細加工技術の援用による植物寄生線虫の土壌環境における動態解明
Project/Area Number |
16380043
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
乙部 和紀 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・土壌作物分析診断手法高度化研究チーム, 主任研究員 (50355517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水久保 隆之 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・病害虫検出同定法研究チーム, 上席研究員 (30370513)
長谷川 周一 国立大学法人北海道大学, 大学院農学研究院環境資源学部門, 教授 (10333634)
中元 朋実 国立大学法人東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (50180419)
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Keywords | 植物寄生性線虫 / 土壌環境 / 水移動 / 蒸散 / 線虫移動性 / 微細加工基板 / 水ポテンシャル / 不耕起 |
Research Abstract |
本課題では「植物寄生性線虫の土壌内移動は、植物の吸水により生じる水移動に影響を受ける」との仮説を立て、その検証を目指した。平成18年度は、走流性における食性依存性の解析(乙部)、供試線虫の供給(水久保)、実土壌モデル系による検証(長谷川)、および線虫の垂直移動性の要因解析(中元)を実施し、以下の知見を得た: 1.既報の移動性指標ならびに水流に対する応答挙動のリアルタイム解析により、微細加工基板内での50〜500μm/secの水流に対する昆虫病原性線虫、糸状菌食性線虫、植物寄生性線虫、細菌食性線虫の挙動を解析した。リアルタイム解析により、走流性は食性に関わらず全ての供試線虫種で確認された。一方、移動性指標による評価では、活動性の高い細菌食性および昆虫病原性の両線虫種において、走流性を示す動物特有の行動の有無を明示できないことが示された。この現象は、従来知見で走流性の検証を妨げる要因であったと推察された。 2.前年度報告にある線虫移動性計測用実土壌モデルにより、孔隙流束に対するサツマイモネコブセンチュウの挙動を、黒ボク土と海砂中で調べた。内径5cmのカラムで移動距離5.5cm相当の流束を1PV(ポアボリューム)として、PV量に対する線虫分布の変化を調査した。両土壌ともに、PVの増加により線虫接種地点から流束方向への分布移動が見られた。この傾向は孔隙サイズ分布上30μm以下の孔隙が少ない海砂でより顕著であった。 3.サツマイモネコブセンチュウの垂直移動特性は、土壌水の自然蒸散流束では現れず、植物からの蒸散に基づいた流束が存在する環境で現れることが示唆された。ただし、植物による誘引と流束による移動バイアスの垂直移動への寄与率は明らかにならなかった。垂直移動への走地性の寄与を調べるため、微細加工基板を垂直に立てた状態で観察し、移動特性を解析した結果、サツマイモネコブセンチュウに走地性は認められなかった。
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