2005 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化発症・進展の修飾に関与する食品成分の作用機作と予防食品の設計
Project/Area Number |
16380090
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
今泉 勝己 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (90037466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 匡央 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (90294909)
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Keywords | 動脈硬化 / 血清コレステロール濃度 / 炎症 / n-6系多価不飽和脂肪酸 / MCP-1 / イソプロスタン |
Research Abstract |
動脈硬化の予防や抑制には、血清コレステロール濃度の低下、血管壁における炎症反応の抑制、酸化ストレスの抑制等が重要であると考えられている。n-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸は、動脈硬化抑制作用を持つ食事成分と考えられている。前年度の実験において、酸化および炎症反応の亢進という動脈硬化促進的な影響にもかかわらずリノール酸の動脈硬化抑制作用が確認された。このことから、リノール酸がもつ動脈硬化抑制作用は、血清コレステロール濃度低下作用に最も強く依存することが示唆された。本研究では、更に動脈硬化モデルマウスであるアポE欠損マウスを用いて、血清コレステロール濃度、生体内炎症反応の程度、生体内酸化ストレスの程度と動脈硬化病変の程度との関係について検討した。 6〜7週齢の雌雄アポE欠損マウスにAIN-76純化食に準じ、10%飽和脂肪酸(SFA群)またはリノール酸を代表例とするPUFAを含む0.04%コレステロール添加食(n-6群)および10%リノール酸を代表例とするPUFAを含む0.1%高コレステロール添加食(n-6+C群)を与え、9週間飼育した。その結果、(1)動脈硬化病変面積値は、SFA群に比べ、n-6群で有意に低下し、n-6+C群では同程度であった。血清総コレステロール濃度は、n-6群で有意に低く、動脈硬化抑制的な影響を示したが、n-6+C群では同程度であった。また、動脈硬化病変面積値と血清総コレステロール濃度との間に正の相関が認められた。このことから、コレステロール摂取により、リノール酸の動脈硬化抑制作用が消失することが確認された。(2)血管壁における炎症反応の指標である動脈壁のmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1) mRNA発現量は、雄では、n-6群およびn-6+C群で有意に上昇し、動脈硬化促進的な影響を及ぼしていると考えられた。雌では、群間で差がなかった。(3)生体内酸化ストレスの指標であるイソプロスタンの一種2,3-dinor-5,6-dihydro-8-iso-PGF_<2α>の尿中の濃度は、雄では、n-6群で有意に上昇したが、n-6+C群では同程度であった。雌では、n-6群およびn-6+C群で上昇する傾向が見られた。MCP-1のmRNA発現は、酸化ストレスに応答する転写因子であるNF-kBにより制御されている。しかし、今回の実験では、MCP-1のmRNA発現量は、酸化ストレスにより説明できない。 以上のことから、コレステロール摂取により、リノール酸の動脈硬化抑制作用が消失するのは、血清コレステロール濃度低下作用が消失することによることが示唆された。
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Research Products
(1 results)