2005 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種シデコブシの保全を目指した遺伝子流動と近交弱勢に関する研究
Project/Area Number |
16380100
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸丸 信弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50241774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 清 森林総合研究所, 関西支部, 森林生態研究グループ長(研究員) (10343790)
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Keywords | 遺伝子流動 / 花粉流動 / マイクロサテライト / シデコブシ / 絶滅危惧種 / 父性解析 / 遺伝的変異 / 遺伝的分化 |
Research Abstract |
本研究では、シデコブシの保全を図るために、マイクロサテライトマーカーを用いた分子生態遺伝学的手法により、花粉を介した遺伝子流動と近交弱勢の程度を明らかにすることを目的としている。平成17年度には、メタ集団内における遺伝子流動と全分布域における集団内と集団間の遺伝的変異を明らかにした。 1.シデコブシのメタ集団内における遺伝子流動 瀬戸市海上の森の屋戸川集団とその周辺に分布する7集団において、核マイクロサテライトマーカーと葉緑体マイクロサテライトマーカーを用いて集団間の分化程度を明らかにし、歴史的な遺伝子流動を評価した。集団間の遺伝的分化の程度は葉緑体DNAが核DNAの2倍以上であり、距離による隔離は核DNAでは検出されたが葉緑体DNAでは検出されなかった。これらの結果から種子による遺伝子流動だけでなく花粉による遺伝子流動も集団間分化を低下させるのに有効であったことが考えられる。次に、同一の核マイクロサテライトマーカーを用いて屋戸川集団の種子親から採取された種子の父性解析により現在の花粉流動パターンを明らかにした。現在の花粉流動は両親間の距離に強く制限されており、ほとんどの花粉流動は集団内にとどまっていた。しかしながら、集団外からの花粉流動は2.6%の頻度で生じており、メタ集団内の集団は遺伝子流動で遺伝的に連結していることが実際に確かめられた。 2.シデコブシの全分布域における集団内と集団間の遺伝的変異 ほぼ全分布域に分布する13集団と核マイクロサテライトマーカーを用いて、集団内と集団間の変異を明らかにした。岐阜県南部から愛知県中部の集団は遺伝的変異が高く、渥美半島の集団は遺伝的変異が低いという地理的な傾向があった。集団間の遺伝的分化程度は高く、この分化は距離による隔離で説明されることがわかった。
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Research Products
(1 results)