2006 Fiscal Year Annual Research Report
稀少な森林となっている主要針葉樹天然林の保全遺伝学的研究
Project/Area Number |
16380112
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
津村 義彦 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 室長 (20353774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 尚樹 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (90343798)
松本 麻子 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (90353862)
舘田 英典 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
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Keywords | 針葉樹 / 保全 / ゲノム / 集団遺伝 / 遺伝構造 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
スギの29天然林集団について開発したCAPSマーカー148遺伝子座で解析を行ない、適応的遺伝子の検出を試みた。使用したマーカー数は139遺伝子座で、それらは共優性遺伝パターンを示し、安定した情報量の多いDNAマーカーであった。得られた遺伝子型データからヘテロ接合度(He)と遺伝的な分化指数であるFSTを用いて適応に関する候補遺伝子の探索を試みた。その結果、99%信頼区間(CI)を超えた5遺伝子座が検出され、99%CI以下では2遺伝子座が検出された。これらはウラスギとオモテスギを遺伝的分化に関連する重要な遺伝子である可能性が極めて高いことが明らかとなった。これら2遺伝子座の遺伝子頻度はウラスギでほぼ1つの対立遺伝子に固定されていたが、オモテスギでは2つの対立遺伝子が存在していた。このことはウラスギで淘汰を受けた結果、一つの対立遺伝子に固定していった経緯が考えられる。また99%信頼区間(CI)の下部で検出された2遺伝子座はbalancing selectionで維持されていると考えられた。これらはこの種の生存に重要な遺伝子であるためにこのような淘汰がかかっているものと考えられる。本研究では集団レベルでゲノムワイドなアプローチを行なうことによって、環境適応的な候補遺伝子の検出が可能であることが示された研究である。我が国では、このような研究アプローチで適応的遺伝子を試みている例はほとんどないため、これからの研究の先駆的な試みとなると考える。
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Research Products
(2 results)