2005 Fiscal Year Annual Research Report
アワビ類各種の再生産戦略の比較による資源量減少要因の解明
Project/Area Number |
16380126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 知彦 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (30323629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (90202043)
渡邊 良朗 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90280958)
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Keywords | アワビ類 / 再生産戦略 / 繁殖生態 / 初期生態 / 資源量減少要因 |
Research Abstract |
1.トコブシ成貝の生殖腺指数と肥満度の変化および卵巣の組織学的観察の結果から、相模湾長井沿岸では、4月頃に成熟を開始し、6〜10月に産卵が可能となることが明らかになった。また、冬季(1〜3月)は全ての個体でGSI、GIが低く、肥満度が高かったことから産卵の休止期と考えられた。トコブシでも昨年度明らかにしたエゾアワビと同様、産卵により成熟した卵母細胞群が放出された後、1ヶ月程度で次の卵母細胞群が産卵可能な成熟段階に達すると考えられた。 2.2001-2004年の長井における2調査地点間の比較では、いずれの年にも、転石上の堆積砂泥量が多かったStn.2では堆積砂泥量が少なかったStn.1に比べてトコブシ幼生の着底密度が低かった。そこで砂泥に代わる2種類の物質(カオリンとアサリ貝殻パウダー)を用いた室内実験を行い、これらの堆積量が浮遊幼生の着底・変態に与える影響を検討した。浮遊幼生は堆積物のない無節サンゴモ上に高率で着底・変態したが、堆積物が存在する場合にはその量が多いほど着底・変態率が有意に低下した。また、その影響は貝殻パウダーよりも粘性の高いカオリンで大きかった。着底基質となるサンゴモ上に堆積する砂泥の量や質は浮遊幼生の着底・変態に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。 3.着底後のトコブシ初期稚貝の生残率は、最大流速の大きかったStn.1でStn.2よりも低かった。Stn.1では転石の移動距離がStn.2に比べて長く、転石表面が激しく磨耗していたことから、初期稚貝が流れにより剥離したり、転石の横転により死亡する割合が高かったものと考えられる。着底後1ヶ月間の平均成長速度には、産卵期前半に着底したコホートほど速い傾向が認められた。各コホートが経験した水温履歴を比較した結果、高い水温を経験したコホートほど成長速度が速かったことがわかり、着底後の成長速度は主に水温により規定されたと考えられる。
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Research Products
(4 results)