2006 Fiscal Year Annual Research Report
アワビ類各種の再生産戦略の比較による資源量減少要因の解明
Project/Area Number |
16380126
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 知彦 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (30323629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 伸吾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90202043)
渡邊 良朗 東京大学, 海洋研究所, 教授 (90280958)
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Keywords | アワビ類 / 再生産戦略 / 繁殖生態 / 初期生態 / 資源量減少要因 |
Research Abstract |
1.神奈川県長井沿岸に生息するアワビ類4種(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ、トコブシ)について、それぞれの産卵期に浮遊幼生および着底初期稚貝の分布調査を実施して放卵・放精日を特定し、海洋環境要因の変化との対応関係を解析することにより、放卵・放精誘発要因の推定を行った。その結果、トコブシの放卵・放精は毎年1〜2度しかない台風の通過時にのみ起こったことがわかり、台風通過に伴う何らか環境変化が放卵・放精誘発要因であることが明らかとなった。それに対して、他の3種の大型アワビ類の放卵・放精は小規模な低気圧の通過時にも認められ、トコブシとは放卵・放精誘発要因あるいはその閾値が異なると考えられた。 2.長井沿岸において、大型アワビ類3種の浮遊幼生分布調査、流況観測、数値モデルを用いた粒子追跡実験を行い、大型アワビ類成貝が高密度に分布する禁漁区で発生した浮遊幼生の分散範囲と着底場への輸送過程を検討した。その結果、水深約10mにある禁漁区で生まれた浮遊幼生の大部分が保護区外に分散し、保護区内に着底するものは少ないと考えられたが、分散方向は主として岸向きであり、浮遊幼生の多くは着底可能な時期まで30m以浅の海域に留まるものと推定された。 3.長井沿岸および宮城県の数カ所に設定した実験漁場において、アワビ類各種の各成長段階および同所的に生息する主要な動物種の安定同位体比を測定し、アワビ類各種の成長段階毎に、主要な捕食者と競合者の特定を試みた。その結果、アクキガイ科の巻貝であるヒメヨウラクやレイシガイが長井沿岸のトコブシおよび大型アワビ類稚貝の、またキタムラサキウニが宮城県沿岸におけるエゾアワビ稚貝の主要捕食者と考えられた。長井のトコブシや大型アワビ類稚貝については、個体数の多い強力な餌料競合種は認められなかった。エゾアワビ稚貝については、エゾザンショウとヤマザンショウが主要な競合種と考えられた。
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Research Products
(4 results)