Research Abstract |
熱帯地方のアマモ場やマングローブ域において,どのような魚種の稚魚が,どのような密度で生息しているのかを調べることによって,両場所が稚魚の成育場となっているかどうかを明らかにした。 本年度の調査は昨年度と同様に,沖縄県石垣島浦底湾の吹通川周辺で,5月,8月,および10月に実施した。各月において,吹通川の河口にみられるマングローブ域と,それからやや離れて存在するアマモ場,さらに,その沖合にある礁原の砂地,礫地,枝状サンゴ域,および礁斜面のサンゴ域に,1m×20mのベルト・トランセクトを各々5箇所設置した。そして,各トランセクト内に出現した各魚種の個体数をSCUBA潜水,あるいは素潜りで計数し,さらに各個体の全長(1cm区分)も記録した。 6つの生息域において,合計265種,5236個体の魚類が観察された。種数と個体数はともに,礁原の枝状サンゴ域と礁斜面のサンゴ域で多く,砂地で最も少なかった。観察された魚種の中で,アマモ場が稚魚の成育場となっている可能性が高い種は,イソフエフキ,ヒメフエダイ,マトフエフキの3種であった。一方,マングローブ域を成育場としている可能性がある種は,ニセクロホシフエダイとオキフエダイの2種であった。これらの種はどれも沖縄地方においては,水産上,重要な種であった。 現在,これらの種の稚魚(アマモ場やマングローブ域にいる個体)と成魚(サンゴ域にいる個体)を採集し,筋肉の安定同位体比を比較することによって,これらの種が実際にアマモ場やマングローブ域を稚魚の成育場として利用しているかどうかを解明しているところである。
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