Research Abstract |
沿岸海域で発生した赤潮の消滅過程において殺藻細菌は重要な役割を果たしており,赤潮の予防や駆除等の防除に向けて,将来の実用化が期待されている。我々は,沿岸域の藻場に繁茂している紅藻マクサGelidium sp.や,緑藻アオサUlva sp.の表面に膨大な数の殺藻細菌が付着している事(多い時は100万/g湿重のオーダー)を偶然に見出し,殺藻細菌の供給源として藻場が重要な役割を果たしている可能性を示した。本研究では,藻場水域と赤潮発生水域の両生態系の殺藻細菌群を比較し,この仮説の検証を試みる。 本年度は,分離した殺藻細菌の殺藻レンジを調べ,16S rDNA塩基配列を基にこれら殺藻細菌の同定を行った。大阪湾の岬町沿岸からマクサとアオサを採集後,滅菌海水の入った瓶中で強振して細菌を剥離し,マイクロプレートMPN法で殺藻細菌の検出計数を行うと同時に,陽性のウェルから殺藻細菌の分離を試み,10株分離することができた。分離細菌について殺藻レンジを調べ,16S rDNA解析による同定を行った。実験に用いた赤潮藻は,ラフィド藻のChattonella antiqua, Fibrocapsa japonica, Heterosigma akashiwo,渦鞭毛藻のKarenia mikimotoiである。 16S rDNA解析による同定の結果,海藻から分離された殺藻細菌は,α-プロテオバクテリア,γ-プロテオバクテリアおよび滑走細菌(CFBグループ)に属していた。α-プロテオバクテリアは初記載である。沿岸海域からの既報のものと同様に,Alteromonas, Pseudoalteromonas, Cytophaga属が多かった。7月にVibrio属の殺藻細菌がアオサとマクサの両方から分離され,同じ殺藻レンジを示したが,同種と同定された。藻場は殺藻細菌の豊富な場であり,藻揚付近の沿岸海域へ殺藻細菌を供給する源になっている可能性が考えられた。
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