Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲巣 月美 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助教授 (20191736)
盆子原 誠 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 講師 (50343611)
田中 良和 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助手 (50291159)
木村 信煕 日本獣医畜産大学, 応用生命科学部, 教授 (00350174)
小野 憲一郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50111480)
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Research Abstract |
猫の肝臓において解糖系の律速酵素であるグルコキナーゼGK活性およびそのmRNA発現が欠損していることを明らかにした(Veterinary Research Communications 29,477).このことは,猫は犬に比べて肝臓でのグルコースの取り込みやその利用能力が著しく劣ることを意味しており,猫でよく見られるインスリン抵抗性の要因のひとつと考えられた.いっぽうで,猫の膵臓においてGKのmRNA発現は犬と同様に認められることから,猫においても血液中のグルコース濃度の増加がインスリン分泌の引き金となると推察された.GKを中心とする細胞でのインスリンシグナルの伝達機構が犬と猫では異なることが考えられ,今後,インスリン受容体基質(insulin receptor substrate, IRS)の発現量を犬と猫,さらに肥満や糖尿病動物で比較検討することにより,猫における肥満や糖尿病の発症機構の特徴が明らかになると考えられた. 白血球と肝臓の酵素活性を犬,猫,牛,マウスで比較検討した.その結果,乳酸脱水素酵素(LDH)のアイソザイムパターンは肝臓と白血球で類似しており,乳酸-ピルビン酸の代謝に関連する酵素系に関しては,白血球でのそれらの変動を調べることにより,肝臓での酵素浩性の変動状態を推察できることが示唆された(Veterinary Research Communications 30,29).これらの知見を応用することにより,肉牛の成長に伴うエネルギー代謝の変動を,白血球酵素活性を調べることにより明らかにした(Research in Veterinary Science 81,19). 猫は犬に比べ,肝臓での糖新生や脂肪酸生合成能が高く肥満しやすい動物であると考えられ,さらにGK活性の欠損により,グルコースの利用能力も著しく低いことが明らかとなった.また,グルコース以外の糖,フルクトースやマンノースの利用能が犬と異なるという知見も得られており,猫における肥満や糖尿病の発症メカニズムの解析には,グルコース以外のフルクトースやマンノースの代謝を含めた糖-脂質代謝メカニズムの解析が必要である.
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