2006 Fiscal Year Annual Research Report
猫の肥満および糖尿病の発症メカニズムの解析とその臨床応用
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16380214
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
新井 敏郎 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (70184257)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲巣 月美 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教授 (20191736)
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50343611)
田中 良和 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助手 (50291159)
木村 信熙 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 教授 (00350174)
小野 憲一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (50111480)
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Keywords | 猫 / 肥満 / 糖尿病 / インスリン抵抗性 / 解糖系酵素 / 糖新生系酵素 / 脂肪酸合成酵素 / インスリンシグナル |
Research Abstract |
1.猫の肥満・糖尿病の発症状況 猫の肥満・糖尿病は日本だけでなく欧米でもその発症が著しく増加している.25〜40%の犬猫が肥満であると考えられており,特に猫で肥満からインスリン抵抗性を来たし,2型糖尿病となるものが多い. 2.猫のインスリン抵抗性発現のメカニズム 猫では肥満を伴う2型糖尿病の発症が犬に比べて多く,その基盤にはインスリン抵抗性があると考えられた.猫の肝臓は解糖系律速酵素の一つであるグルコキナーゼ活性を欠き,グルコーストランスポート活性は犬に比べ著しく低い,いっぽう糖新生系酵素活性は有意に高いという独特の糖脂質代謝機構を持つ.この猫特有の代謝機構が要因となりインスリン抵抗性が引き起こされていると考えられた(Research in Veterinary Science 78,39;Veterinary Research Communications 29,477).猫は犬に比べ,肝臓でのグルコース取り込みやその利用能が低く,高血糖を来たしやすい.さらに脂肪酸生合成系酵素活性も犬に比べ高く,肥満しやすい性質を有するので,これらがインスリン抵抗性の要因となり,さらに2型糖尿病の発症につながると考えられた. 3.猫の肥満・糖尿病治療のための予防獣医学の展開 肥満や糖尿病のような多因子疾患は,その予防が最も効果的な治療法といえる.特にインスリン抵抗性を示す猫ではその傾向が強い.人では内臓脂肪の蓄積が主たる原因となって肥満・糖尿病・高血圧などの糖脂質代謝異常が一人の患者に合併して起こるメタボリックシンドロームが医学領域の急務の課題となっているが,猫でも同様の対応が必要である.そのために人で策定されているような明確な診断基準を設け,早期診断による予防の徹底が猫の肥満・糖尿病の最も効果的な対症法である.
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Research Products
(9 results)