2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体微量金属の作用に着目した脳機能解析と脳疾患の予防
Project/Area Number |
16390035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 助教授 (90145714)
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Keywords | 亜鉛 / 生体微量金属 / 神経伝達調節因子 / 海馬 / 亜鉛不足 / グルタミン酸神経毒性 / てんかん |
Research Abstract |
亜鉛充足率が100%でない人口の割合は世界全体で約50%と報告されており、健康面での亜鉛不足は深刻な問題である。亜鉛摂取不足により学習能が低下し、攻撃性が増大する一方、てんかん発作に対する感受性も増大する。亜鉛不足による脳機能障害のメカニズムを明らかにするために、てんかん発作時におけるラット海馬細胞外液中の神経伝達物質濃度を測定したところ、亜鉛不足により細胞外グルタミン酸濃度が過剰に増加し、グルタミン酸神経毒性が増大することが示唆された。細胞外グルタミン酸濃度の増加はニューロンならびにアストロサイトに起因すると考えられる。刺激に対する歯状回顆粒細胞の応答性を調べたところ、亜鉛不足により歯状回顆粒細胞の興奮性が増大した。この興奮性増大がシナプス後ニューロンであるCA3錐体細胞を過剰興奮させる可能性がある。そこで、低亜鉛食で飼育したマウスにカイニン酸を投与し、海馬錐体細胞死を観察した。海馬をNissl染色したところ、カイニン酸投与により海馬CA1及びCA3領域で錐体細胞が脱落し、その脱落は低亜鉛食群で顕著であった。また、TUNEL法によりアポトーシスを検出してみると、CA1及びCA3領域の錐体細胞層でTUNEL陽性細胞が観察され、陽性細胞数は低亜鉛食群で有意に多かった。以上から、亜鉛摂取不足により海馬ではグルタミン酸神経毒性発現が促進され、神経細胞死が増加することが明らかとなった。一方、高カリウム刺激で誘発した海馬細胞外グルタミン酸濃度の増加は柴胡加竜骨牡蛎湯をあらかじめ経口投与することによって抑制されることが明らかとなった。グルタミン酸神経毒性がこの漢方薬で予防できる可能性がある。グルタミン酸神経毒性は様々な脳疾患における神経細胞死の共通メカニズムの一つであり、その予防法を今後さらに検討するとともに、学習能低下、攻撃性増大のメカニズムを検討し、その予防法を明らかにする。
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Research Products
(6 results)