2006 Fiscal Year Annual Research Report
テロメア結合蛋白質Potlを中心とするテロメア調節機構の分子論的解析
Project/Area Number |
16390083
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部, 助教授 (80227678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 一博 横浜市立大学, 医学部, 教授 (90260330)
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Keywords | テロメア結合蛋白質 / テロメア1本鎖DNA / テロメラーゼ / 4本鎖DNA構造 / 未変性ゲル電気泳動 / CDスペクトル / 蛍光スペクトル |
Research Abstract |
Pot1のN末端側182アミノ酸残基がテロメア1本鎖DNA領域との特異的な結合に必要なドメイン(DBD)であることを既に明らかにしている。大腸菌内での大量発現系を用いたPot1DBDの調製方法についても既に確立している。この系を用いてPot1DBDを調製し、これまでPot1DBDの3次元構造を解析し、3本のαヘリックスと8本のβストランドを有するOB (oligonucleotide/oligosaccharide binding)foldのファミリーに属することを明らかにしている。また、d (GGTTAC)がPot1DBDとの特異的な結合に必要である、テロメア1本鎖DNA側の最適な塩基配列であることも明らかにしている。さらに、d (GGTTAC)との複合体形成に関与するアミノ酸残基を明らかにすると共に、複合体形成への関与の度合が大きいアミノ酸残基と小さいアミノ酸残基があることも明らかにしている。 そこで本年度は、まず、分裂酵母テロメアDNA配列4Gn : d (G_nTTAC_)4(n=3,4)の4本鎖DNA構造形成の有無を未変性ゲル電気泳動とCDスペクトルにより検討した。150mM NaCl存在下で4G3はパラレル型4本鎖DNA構造とアンチパラレル型4本鎖DNA構造との混合物であるが、4G4はアンチパラレル型4本鎖DNA構造のみを形成した。次に、Pot1DBDと4本鎖DNA構造の相互作用を解析した。4G4のアンチパラレル型4本鎖DNA構造にPot1DBDを添加した際のCDスペクトル変化から、Pot1DBDがアンチパラレル型4本鎖DNA構造を減少させる活性を有することを明らかにした。また、5'末端と3'末端を各々蛍光色素と消光色素で標識した4G4のアンチパラレル型4本鎖DNA構造にPot1DBDを添加した際の蛍光スペクトル変化から、Pot1DBDがアンチパラレル型4本鎖DNA構造をほどく活性を有することも明らかにした。さらに、4G4のアンチパラレル型4本鎖DNA構造またはd (GGTTAC)の1本鎖DNA構造と一連の点変異型Pot1DBDとの相互作用を解析したところ、1本鎖DNA構造に結合する活性が強い点変異型Pot1DBDほど、アンチパラレル型4本鎖DNA構造をほどく活性が強いことを明らかにした。これより、Pot1DBDが1本鎖DNA構造に結合すると遊離状態の1本鎖DNAの量が減少するため、アンチパラレル型4本鎖DNA構造と1本鎖DNA構造との問の平衡が1本鎖DNA構造のほうにシフトしてしまい、これがアンチパラレル型4本鎖DNA構造をほどくのを誘発すると考えられる。 アンチパラレル型4本鎖DNA構造が形成されると、テロメラーゼのテロメアDNA伸長活性が阻害されることが報告されている。これを考慮すると、テロメアDNAの3'末端の突出した1本鎖DNA領域が折れ畳んで形成したアンチパラレル型4本鎖DNA構造をPot1がほどくことによって、テロメラーゼによるテロメアDNA伸長にPot1が重要な役割を果たすと考えられる。これは、生体内においてPot1の過剰発現がテロメアDNA伸長を誘導するという報告と一致する。
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Research Products
(6 results)