2006 Fiscal Year Annual Research Report
本邦の悪性リンパ腫の病因、病態解明のための分子病理学的研究
Project/Area Number |
16390105
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青笹 克之 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30115985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 裕彦 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (60263266)
高桑 徹也 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40244933)
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 病因 / EBウィルス / 予後因子 |
Research Abstract |
本研究は大阪リンパ腫研究会に登録される症例(これまでに3000例をこえている)を中心とした悪性リンパ腫症例についての疫学的、分子病理学的検討を通じて本邦の悪性リンパ腫の病因・病態の解明を目指したものである。 平成18年度の主な実績としては以下のものがある。 (1)鼻腔NK/T細胞リンパ腫発生における生活環境要因の関与を調べる目的で日本(大阪大、旭川医大、聖マリアンナ大、琉球大)、韓国(延世大)、中国(中国医科大)での症例・対照研究を実施した。その結果、農薬や化学溶媒への曝露が危険要因であることが示された(Int J Cancer 2006)。 (2)慢性膿胸患者の膿胸膜にビマン性大細胞型B細胞リンパ腫が発生する(Pyothorax-associated lynlphoma : PAL)。PALは全例がEBVゲノムが腫瘍細胞核内に検出される。EBVのコードする潜伏感染遺伝子のうちEBNA2の発現消失するものは予後不良であることを示した(Int J Cancer 2006)。 (3)関節リュウマチ(RA)患者にリンパ腫が発生することが知られている(RA-LPD)。RA-LPDの発生にはRAの治療に用いられる免疫制御剤であるMetroxate (MTX)の関与が指摘されている。そこでRA-LPDのうちMTX使用と非使用者のRA-LPDを比較したところ、両者には臨床病理学的な相違はないが、MTX使用群ではMTX投与を打ち切るとRA-LPDの自然消槌がみられることがある(J Rheumatol 2007)。 (4)DNA二重鎖切断の修復遺伝子であるATM, ATR, MRE11の異常を50の白血病リンパ腫細胞株で調べたところ、TM, MRE11の異常がしばしば観察された。これにより、二重鎖切断修復の異常からゲノム不安定性が引き起され、腫瘍発生に寄与することが考えられた(Cancer Sci 2006)。 (5)この他にHodgkin lymphomaの病理・疫学についてのレヴューを書いた(Int J Hematol 2006)。 以上、悪性リンパ腫の発症要因・機構に新知見を加えるとともに、臨床病理学的には新しい視点からの整理を行った。
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Research Products
(6 results)