Research Abstract |
医療通訳の課題として,医療通訳側では誤訳による事故の責任と保障,患者のプライバシーの保護,患者と通訳者の個人関係への発展防止,通訳技術と専門知識の必要性,医療通訳養成プログラムの開発,少数言語の人材不足などがあげられる.また,医療通訳は,単に日本語を外国語に置き換えるだけでなく,日本の医療システムの理解,外国人の文化習慣の理解も求められる. これら医療通訳者に残る重要課題の即時性,簡便性,普遍性,医療経済的観点を克服する立場から,日常医療現場に応用できる多言語医療会話支援ソフトウエアの開発に取り組んだ.ITを使用した多言語の自動翻訳システムは未だ医療現場に普及していない.これまでは診察場面での会話が日本語併記で多言語化され利用されてきた.これは問診票を指さしながら診療を進めることを想定している.我々が開発を進める多言語間医療用自動翻訳システムは日本ならびに外国においてもいまだ普及していない.本システムは実際の診療場面を想定し,リアルタイムに患者と医師が画面上で多言語間での会話が行なえることから,外国人診療において極めて有用性が高いと考えられる.本システムの開発上重要な点は医療用文例用語作成・翻訳とそれをコンピュータ上に表示させるためのソフトウエアシステムの開発の2点である.とりあえず,臨床応用の現場は小児救急ならびに産婦人科を,言語は英語,中国語,ポルトガル語,スペイン語を考えている.すでに,これまで小児救急ならびに産婦人科文例はすでに複数のそれぞれの専門医が入念に作成し,英語,中国語,ポルトガル語スペイン語をそれぞれ母語とする医師が翻訳を終了している.今後はそれをコンピュータ上に表示させるためのソフトウエアシステムの開発に取り組んでいく.ソフトウエアシステムに搭載する基本機能の概要はまとまりつつあり,今後はコンピュータ上にその表示がスムーズに行えるべく研究をすすめ,完成後に4医療施設で臨床試験を実施しその評価を行う予定である.
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