Research Abstract |
広島圏域メディカルコントロール協議会(面積2,650.19km^2,サービス対象人口1,328,805人)における,1年間の重症外傷および病院外心停止を集計し,考察を加えた. 1.重症外傷 重症外傷として活動記録票/検証票が提出されたのは290件であった.L&G判断(重症度を推定する3つの基準)が「適切」と評価された割合は,(1)状況評価が93.4%,(2)初期評価が80.2%,(3)全身観察が73.6%であった.また,病院選定が適切と評価されたものは73.6%であった. 転帰調査票が回収できた246例の内,L&Gとして三次病院へ搬送したものの中等症であったオーバートリアージは82例,逆にL&Gの症例であったにもかかわらず一次二次病院へ搬送したところ重症であったアンダートリアージは7例であった. 以上のように,この調査により,(1)救急救命士の現場活動の質,および(2)地域における患者収容システムの評価につながることが示された.課題として母集団の基準の正確性が挙げられ,集計項目および方法の修正が議論された. 2.病院外心停止 676例(50.9例/人口10万/年)の蘇生対象心停止が発生し,これらをウツタイン様式に基づいて集計した.目撃された心原性VF症例(39例)のみについてみると,病院前自己循環再開率は30.8%(12例),全自己循環再開率は48.7%(19例),生存入院率は35.9%(14例),24時間生存率は33.3%(13例),生存・社会復帰率は15.4%(6例)であった.すなわち,目撃された心原性心停止から社会復帰した6例の初期心電図はいずれも心室細動であり,しかも6例とも病院到着前に自己循環が再開した症例であった.また,全病院外CPA症例の中から社会復帰した16例のうち13例が,病院到着前に自己循環が再開した症例であった. 目撃-DC時間(患者の昏倒が目撃された瞬間から電気ショックが施行されるまでの所要時間)は中央値15分から10.5分に短縮され,患者接触-DC所要(救急隊員が患者のそばに到達した瞬間から電気ショックが施行されるまでの所要時間)は7分から2.5分に短縮された.その結果を2002年以前と比較すると,病院前自己循環再開率は16.4%から36.1%へと飛躍的に向上し,生存自宅退院率も12.9%から16.7%へと向上した.
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