2005 Fiscal Year Annual Research Report
格差拡大社会における公平志向保健・医療政策に関する国際比較実証研究
Project/Area Number |
16390154
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松田 亮三 立命館大学, 産業社会学部, 助教授 (20260812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 一夫 福井大学, 医学部, 助教授 (90313741)
青木 郁夫 阪南大学, 経済学部, 教授 (80184026)
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Keywords | 医療政策 / 健康格差 / 公平 / 非営利セクター / 国際比較 / アメリカ / イギリス / スウェーデン |
Research Abstract |
1、健康・医療の不公平と格差に関する理論的検討 健康・医療の不公平(inequity)と格差(inequality)の理論的検討により,国際比較の鍵概念として,医療財政における公平の問題とは区別される,健康と医療アクセス・質の問題を扱う概念として,新たに「臨床的な公平(clinical equity)」という概念を提出し,第5回国際医療経済学会で報告した。 2.各国の事例分析 昨年度形成した枠組みにより,以下の3力カ国の分析を第29回日本医療経済学会シンポジウムで報告した。各国での中央・地方のレベルでの政策展開に関連する資料を入手・検討した。ニュージーランドの政策展開について外部研究者を招き知見を深めた。各国についての主な知見は以下の通り。 (1)イギリス:インタビュー調査を2006年3月に実施した。包括的な健康格差対策が政策立案されているが,その成果は今までのところはかばかしくなく,より広い社会・経済政策の影響が大きい可能性がある。保健局の統合や行政圏ごとの公衆衛生長官の活動により健康格差対策が深化していくことが期待されている。NPO部門もその活動に関与している。 (2)アメリカ合衆国:病院やコミュニティ・ヘルス・センター(CHCs)により,限定的ではあるが低所得者・無保険者の医療アクセスが向上している面があるが,それを財政的に支えているのは連邦政府の制度(免税債の発行権の付与,CHCsへの補助など),州レベルでの財政プール制度,病院内部での財源補填,寄付金などである。病院が無保険者に対して医療を提供することは,非営利病院の場合には事実状義務付けられており,それによって営利病院等の行動も規定されている面がある。連邦レベルでは乖離(disparity)の把握が追求されているが,市場をベースにした医療保険構造の米国ではその対策は部分的である。 (3)スウェーデン:健康格差は拡大している傾向が指摘されており,公衆衛生戦略では格差の縮小が含意されている。医療政策は自治体における改革がすすめられているが,利用者負担の増大の中でアクセスの問題は政策課題として念頭におかれている。
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Research Products
(4 results)