2006 Fiscal Year Annual Research Report
格差拡大社会における公平志向保健・医療政策に関する国際比較実証研究
Project/Area Number |
16390154
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松田 亮三 Ritsumeikan University, 産業社会学部, 教授 (20260812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 一夫 京都橘大学, 文化政策学部, 准教授 (90313741)
青木 郁夫 阪南大学, 経済学部, 教授 (80184026)
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Keywords | 医療政策 / 健康格差 / 医療の質 / 非営利セクター / EU / アメリカ / イギリス / 公衆衛生 |
Research Abstract |
1.健康と医療アクセス・質の問題についての理論的検討を概括した。また、英国と米国の研究者を招き、健康格差に対する理論と政策展開を検討する国際シンポジウムを実施した。 2.以下の3カ国の分析をそれぞれ、健康格差対策、医療アクセス・質格差対策について検討した。全体としての分析結果をより精緻化した。 (1)イギリス:(1)包括的な健康格差対策が政策立案されているが,その成果は今までのところはかばかしくなく,より広い社会・経済政策の影響が大きい可能性がある。NHSのガバナンスの中で、地方政府やNPOを巻き込んだ展開が行われている。(2)無料であることだけで医療格差が不在という分けでなく、資源配分の在り方、選択の在り方などを含めた新たな政策展開が検討されている。 (2)アメリカ合衆国:(1)健康格差対策は人種間の医療アクセス(無保険問題や医療リテラシーの問題を含む)として問題化されており、その文脈の中で、多様な関係者を含めた対策や研究が進展している。(2)無保険は医療アクセスの問題を招く。それに対する補完的対策が、連邦・州・病院設置者(多くはNPO)によって行われているが、限定的なものにとどまっている。 (3)スウェーデン:(1)健康格差は拡大している傾向が指摘されており,格差縮小を含んだ公衆衛生戦略が展開されている。(2)医療政策は自治体における改革がすすめられているが,選択の拡大や利用者負担の増大などが論点となり、その中でアクセスの問題も議論されている。 3.総括:健康格差対策と医療格差対策は相互に関連しているが、それぞれの独自性をもっている。特に、健康格差対策がどのように政策課題として扱われるかは、その社会のより大きな集団間の政治や政策展開と関わって考える必要がある。各国の政策展開はそれぞれの歴史と社会の主要な課題を反映した独特の展開を示しており、それらについては、単行本として成果発表を行っていく予定である。
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Research Products
(9 results)