2004 Fiscal Year Annual Research Report
シックハウス症候群の病態の分子生物学的解析に基づく生化学的検査法開発に関する研究
Project/Area Number |
16390167
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 俊弘 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20271760)
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90322908)
坂部 貢 北里研究所病院, 臨床環境医学センター, センター長 (70162302)
小島 弘幸 北海道立衛生研究所, 研究職員
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Keywords | シックハウス症候群 / 多種類化学物質過敏症 / 末梢血単核球 / DNAマイクロアレイ解析 / マーカー遺伝子 / mRNA / 生体因子産物 / 生化学的検査 |
Research Abstract |
多種類化学物質過敏症(MCS)には特異的症状が無く、自律神経の変調に伴う不定愁訴や精神神経症状が前面に現れる。また、MCSの診断には、一般的疾患等の診断に用いられるような生化学的検査などの検査法がなく、自律神経系の変調症状を捉える理学的検査、特に眼科的検査が主に行われている。さらに、原因物質の特定には化学物質等を除去したクリーンルームでの負荷試験が必須とされ、確定診断の実施可能な医療施設が限られる。こうした状況がMCSに対する認識が普及しない原因と考えられる。そこで、MCS患者から得た血液を検体として用いる生化学的検査による診断法を開発することを本研究の目的とする。 今年度に旭川医大附属病院にて5名、北里研究所病院にて5名の化学物質過敏症(MCS)と診断を受けた患者と5名の健常者を対照群について、健常者群からの末梢血単核球(PBMCs)より抽出・精製後に混合したtotal RNAと、MCS患者および健常者のPBMCsより抽出・精製したtotal RNAを、それぞれ異なる蛍光色素で標識してDNAマイクロアレイ解析を行い、網羅的にマーカー遺伝子の探索を試みた。健常者群検体に対して健常者検体で変動せずMCS患者検体の遺伝子発現が2倍以上あるいは0.5倍以下を示す場合を変動遺伝子とした。その結果、MCS患者検体で発現が増加した主な遺伝子が2つ、逆に発現が減少した主な遺伝子が8つ見いだされた。特に発現が減少した遺伝子は免疫応答制御に関与する遺伝子であり注目される。これらの遺伝子は患者群で発現が増加ないし減少する遺伝子として、診断の際のマーカー遺伝子となり得る可能性がある。次年度に、患者例数を増やす事および変動の見られた遺伝子群の生体因子産物を血漿・血清サンプル中に探り、一般医療機関においても測定しうるMCS診断のための検査法として用いることが可能か検討する。
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