2005 Fiscal Year Annual Research Report
シックハウス症候群の病態の分子生物学的解析に基づく生化学的検査法開発に関する研究
Project/Area Number |
16390167
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 俊弘 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20271760)
中木 良彦 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90322908)
坂部 貢 北里大学, 薬学部, 教授 (70162302)
小島 弘幸 北海道立衛生研究所, 研究職員 (10414286)
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Keywords | シックハウス症候群 / 多種類化学物質過敏症 / 末梢血単核球 / DNAマイクロアレイ解析 / マーカー遺伝子 / mRNA / 生体因子産物 / 生化学的検査 |
Research Abstract |
多種類化学物質過敏症(MCS)には有用な生化学的検査法がない。また原因物質の特定にはクリーンルームでの負荷試験が確定診断となるため実施可能な医療施設が限られる。本研究では、末梢血検体の生化学的検査によるMCS診断法の開発を目的とした。MCSと診断された患者16名と9名の健常者、および4名の健常者をコントロール群として解析した。コントロール群の末梢血単核球(PBMCs)より得て混合したtotal RNAと、同様にMCS患者および健常者のPBMCsより得たtotal RNAを、それぞれ異なる蛍光色素で標識してDNAマイクロアレイ解析にて網羅的にマーカー遺伝子の探索を試みた。コントロール群に対して健常者で変動せずMCS患者で発現が2倍以上あるいは0.5倍以下となるものを変動遺伝子とした。MCS患者の全例に共通して変動する遺伝子は無かったが、半数以上に共通して変動する28遺伝子(増加傾向2、減少傾向26)を見出した。このうち遺伝子発現が大きいMCS患者群10名について健常者と比較し特徴的な10変動遺伝子を特定した。このうち、5遺伝子はホルムアルデヒド(HCHO)曝露マウスのPBMCsや脾細胞で患者同様の遺伝子発現減少が観察され注目に値する。これら遺伝子群はMCS発症との因果関係は不明確であるが、生体ストレスにより変動するため、診断マーカー遺伝子となり得ると考え、遺伝子群の蛋白産物を血清中に探ることを検討した。しかし組織・細胞内に発現するものの血液中に現れない酵素や受容体であったり、サイトカインなど血液中に放出されるものの濃度が低く測定に適さないものなどであった。そのため、一般医療機関で実施しうるMCS診断のための検査法は確立できなかった。今後、肝・腎・中枢神経系などから血液へ分泌される蛋白因子等についてプロテインチップなどを活用測定することも必要と考える。
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