2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺サーファクタント蛋白質による自然免疫監視機構と呼吸器感染症克服への臨床応用
Project/Area Number |
16390235
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
黒木 由夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70161784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 弘毅 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60231396)
佐野 仁美 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (80295344)
西谷 千明 札幌医科大学, 医学部, 助手 (30381255)
千葉 弘文 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40347175)
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Keywords | 肺サーファクタント蛋白質 / SP-A / SP-D / コレクチン / スカベンジャー受容体 / Toll様受容体 / MD-2 / エンドトキシン |
Research Abstract |
本研究は、肺コレクチンとToll様受容体(TLR)のリガンド認識の分子機構とマクロファージによる細菌貪食機構を明らかにし、呼吸器感染症克服への臨床応用のための分子基盤を確立することを目的として遂行された。以下に本年度の実績を要約する。 1.TLR4の細胞外ドメインから成る可溶型組換え蛋白質(sTLR4)を作成し、コレクチンとの相互作用を検討したところ、SP-AとSP-Dの肺コレクチンがsTLR4に結合することが明らかにされた。肺コレクチンとsTLR4との結合はCa2+依存性であったが、糖鎖除去sTLR4にも結合したので、TLR4細胞外ドメインと肺コレクチンとの結合は蛋白質間相互作用によるものであると考えられた。単クローン抗体を用いたエピトープマッピングと阻止実験により、SP-Dは糖鎖認識領域を介してsTLR4に結合することが示された。さらに、SP-Aは、MD-2にも結合し、その結合はsTLR4と同様にCRDを介することが示された。コラゲナーゼ処理SP-A(CRF)は、ネック領域とCRDから成る3量体を呈するが、CRFもsTLR4とMD-2に結合する。しかし、その親和性は18量体を呈する野生型SP-Aに比べて著しく低下していた。SP-Aは、TLR4/MD-2発現HEK293細胞でのsmooth LPS惹起NF-κB活性化を有意に低下させるが、CRFによるNF-κB活性化の抑制効果は18量体SP-Aに比較して著名に減弱していた。このことは、SP-AのN末端側とコラーゲン様領域による高次多量体構造の形成がTLR4を介する炎症制御に重要であることを示している。 2.コレクチンとTLR2は、滲出性中耳炎の起炎菌として注目されているAlloiococcus otitidisに結合し、マクロファージにおける菌体貪食を促進することが示された。 3.コレクチンによる細胞膜スカベンジャー受容体(SR-A)の局在増強に関して、SR-A結合蛋白質の同定を、yeast two-hybrid法とアフィニティカラム結合蛋白のTOF-MSによる質量分析により行い、SR-A結合蛋白質としてmicrotuble binding proteinのHook3様蛋白を同定した。 4.sTLR4は単独では、エンドトキシンの本体であるリピドAには結合しないことが示された。MD-2はリピドAに結合するが、sTLR4存在下ではリピドAのMD-2への結合量、および、結合親和性が増加することが示され、TLR4細胞外ドメインの機能であると考えられた。sTLR4-MD-2複合体はTLR4発現細胞へのエンドトキシン結合を阻害し、エンドトキシン惹起炎症性サイトカイン分泌を抑制した。さらに、マウスへ気管内エンドトキシン投与による肺炎症モデルにおいて、sTLR4-MD-2の同時投与は肺炎症を緩和させることが示され、エンドトキシン惹起肺炎症に対する臨床応用の可能性が示された。
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Research Products
(8 results)