2004 Fiscal Year Annual Research Report
養育環境が生む精神疾患の発症脆弱性に関わるニューロン・ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
16390321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神庭 重信 九州大学, 医学研究院, 教授 (50195187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 俊秀 九州大学, 医学研究院, 助教授 (60215093)
川嵜 弘詔 九州大学, 大学病院, 講師 (50224762)
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Keywords | ストレス / 養育環境 / 精神疾患 / 神経新生 / 海馬 / インターフェロン / ginseng / CREB |
Research Abstract |
精神疾患の脆弱性の神経生物学的基盤を2つのアプローチで研究した。(I)養育行動が仔ラットに与える長期的影響と養育行動の神経基盤に関する研究。ストレス脆弱性は養育環境が脳の発達に長期的な弊害をもたらすことによって作られると考えられる。母子分離ストレスが、発達後のストレス脆弱性、不安の強さ、学習能力の低さと結びついていることは行動科学的に明らかにされているが、そのメカニズムは不明のままであった。そこで母子分離ストレス負荷ラットを用いて、ストレス脆弱性と関連する遺伝子、遺伝子転写調節因子、神経新生について検討した。その結果、よりよい養育環境を与えたラットでは、成熟後に拘束ストレス負荷時に海馬神経新生が増加することを見いだした。従来ストレスは神経新生を抑制することが知られていた。よい養育環境は神経新生を促進し、ストレスに抗する機能を育むと考えられた。海馬神経新生を促進する物質が精神疾患の脆弱性を修復する可能性があるため、多くの候補物質を調べたところ、人参のサポニン成分ginsengにその作用があることを発見した(Qiao et al.,2005)。また、海馬における遺伝子転写調節因子phospholirated CREBに関して、情動ストレスと関連した記憶の形成に関わっていることを明らかにした(Kudo et al.,2004)。(II)interferon-α(hIFN-α)によるうつ病脆弱性モデルの解析。抗うつ薬の作用が海馬神経新生の促進と関係している可能性が示唆されている。今回我々は、うつ病の脆弱性のモデルとして、うつ病を誘発することで知られるサイトカインhIFN-α投与による海馬神経新生への影響を調べた。その結果、hIFN-α投与により、海馬においてアストログリアを介したIL-1β産生反応が誘発され、神経新生が減少することが明かとなった。これらの結果から、hIFN-αの中枢作用機序の一端が明らかにされた。抗うつ薬の機序からのみ推定されていた、うつ病の病態として、海馬神経新生の抑制が関与している可能性が裏付けられた。
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Research Products
(2 results)