2005 Fiscal Year Annual Research Report
養育環境が生む精神疾患の発症脆弱性に関わるニューロン・ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
16390321
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神庭 重信 九州大学, 医学研究院, 教授 (50195187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 俊秀 九州大学, 医学研究院, 助教授 (60215093)
川嵜 弘詔 九州大学, 医学研究院, 講師 (50224762)
門司 晃 九州大学, 医学研究院, 講師 (00294942)
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Keywords | 海馬 / ストレス / 脆弱性 / 神経新生 / CREB / amyloid-beta / 記憶 / AMPA受容体 |
Research Abstract |
養育環境が精神疾患の発症脆弱性と関わっていることが近年明らかにされてきた。すなわち、養育環境の劣化は、脳のストレス応答回路に永続的な影響を与え、成熟後にもストレス反応が過剰に起こる。17年度は、このストレス応答と密接に関わる脳部位である海馬の機能とその障害に焦点を当てて基礎的検討を進め、幾つかの新しい知見を得たので報告する。 海馬機能が脆弱となる老齢ラットを用いて、その記憶能力と神経化学的機能との関連を調べた。その結果、老齢ラットでは、情報伝達分子であるリン酸化CREBのストレス応答が減弱していることが分かった。さらに、海馬の歯状回では神経細胞の申請が起こるが、老齢ラットでは、この神経新生のストレス応答も低下していることが明らかとなった(Kudo et al.,2005;Wati et al.,2005)。これらの変化が、老齢での条件記憶の低下を説明する可能性がある。さらに海馬の障害をもたらすamyloid-betaタンパクの細胞障害メカニズムも検討した。その結果、amyloid-betaタンパクの凝集の程度と細胞障害度とには単純な関係はなく、凝集の初期の産物がもっとも細胞障害性が強いことが分かった(Hashioka et al.,2005)。 グルタミン酸系を介する神経細胞障害をニューロンネットワーク全体の機能異常としてとらえる点が独創的であり、こうした発症脆弱性モデルを用いて神経細胞障害仮説を検討した研究はまだ知られていない。今年度は予備的検討として、情動の発達に関連深いストレス反応系にうち、前頭前野のカテコルールアミン系活動のAMPA/kainate受容体による調節機構を、脳内微小透析法を用いて検討した。その結果、刺激を受けたAMPA受容体の脱感作を非定型抗精神病薬が抑制する可能性が示唆された。本研究は、AMPA受容体を標的とした新しい抗ストレス薬開発の可能性が示された。
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Research Products
(4 results)