2006 Fiscal Year Annual Research Report
養育環境が生む精神疾患の発症脆弱性に関わるニューロン・ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
16390321
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
神庭 重信 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (50195187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 俊秀 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (60215093)
川嵜 弘詔 九州大学, 大学病院, 講師 (50224762)
門司 晃 九州大学, 大学病院, 講師 (00294942)
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Keywords | 精神疾患 / 脆弱性 / 海馬 / 神経新生 / インターフェロン / CREB / 情動 |
Research Abstract |
本研究では、情動の発達とともに形成される発症脆弱性に関わる分子神経科学的メカニズムを明らかにし、養育環境によるストレス脆弱性を修復する介入手段の開発と好ましい養育環境を科学的に考えていく材料とすることを目的として研究を進めた。情動発達の神経生物学的基盤を解明するとともに、その障害がもたらすストレス脆弱性のメカニズムについて明らかにし、予防法開発に結びつけることを目的としている。このため、行動学的ならびに神経化学的手法を用いて、情動の制御に関わるニューロン・ネットワークの構造と機能のメカニズムを明らかにする。最終年度の18年度は、過去2年間の結果を追試し確認するとともに、不足するデータを補完し、成果報告を行う年とした。 抗うつ薬の作用が海馬神経新生の促進と関係している可能性が示唆されている。今回我々は、うつ病の脆弱性のモデルとして、うつ病を誘発することで知られるサイトカインhIFN-α投与による海馬神経新生への影響を調べた。その結果、hIFN-α投与により、海馬においてアストログリアを介したIL-1β産生反応が誘発され、神経新生が減少することが明かとなった(Kaneko et al.,2006)。これらの結果から、hIFN-αの中枢作用機序の一端が明らかにされた。抗うつ薬の機序からのみ推定されていた、うつ病の発症脆弱性として、海馬神経新生の抑制が関与している可能性が裏付けられた。海馬機能が脆弱となる老齢ラットを用いて、その情動記憶能力と神経化学的機能との関連を調べた。その結果、老齢ラットでは、情報伝達分子であるリン酸化CREBのストレス応答が減弱していることが分かった。さらに、海馬の歯状回では神経細胞の申請が起こるが、老齢ラットでは、この神経新生のストレス応答も低下していることが明らかとなった(Wati et al.,2006)。これらの変化が、精神疾患の脆弱性を説明する可能性がある。
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Research Products
(2 results)