2005 Fiscal Year Annual Research Report
胎生・幼年期におけるアルコール・依存性薬物暴露と成長後の神経回路網の変異
Project/Area Number |
16390327
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90347170)
加藤 忠文 理化学研究所, 脳科学総合研究センター・老化・精神疾患研究グループ, グループディレクター (30214381)
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Keywords | エタノール / 胎児性アルコール症候群 / 神経幹細胞 / 神経新生 / 神経栄養因子 / BDNF / CREB / NRSF / REST |
Research Abstract |
我々は,アルコールによる脳神経回路網修復・維持機構の変化という観点で,主に胎生期・若年期のアルコール摂取が脳に及ぼすダメージについて細胞生物学的な解析を実施した。はじめに,培養細胞、動物モデルを用いて,アルコール暴露とcAMPやCa2+およびCa2+結合蛋白質を中心とした細胞内情報伝達系変化の検索を行い,アルコールによるNF-kBの活性化とCREB活性の低下作用が,その後のBDNFなどの栄養因子蛋白の合成低下を引き起こし,そのことがアルコールによる神経細胞障害ならびに幼若神経細胞の発達機能障害の発現に重要な影響を及ぼすことを明らかにした。 次に,アルコールによる脳神経ネットワークの異常に関わる細胞・分子変異について検索・解明を進め,1)生理的濃度に近い比較的低濃度のアルコールによって神経幹細胞の分化が特異的に変化し,神経細胞への分化が抑制され,一方で,グリア細胞への分化が促進されること,2)その機序に神経幹細胞内栄養因子シグナル伝達系の変化が関与し,神経幹細胞の分化運命決定に重要な役割を示す転写因子NRSF/RESTの活性変化が深く関与することをin vitroの系で明らかにした。さらに,3)妊娠ラットのアルコール摂取によって胎児脳内で神経幹細胞の増殖が抑えられグリア細胞への分化・増殖が促進されること,また,4)アルコール暴露後の胎児脳から取り出した神経幹細胞の分化機能はその後のアルコールの再暴露に極めて強く影響をうけること,を明らかとした。 これらのことは,一言で言えば,母体のアルコール摂取によって,胎児の脳内で神経幹細胞の機能に異常が生じ,その後の子供の脳神経ネットワークの形成が重大な影響を受けることを強く示唆していると考えられた。
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Research Products
(6 results)