2006 Fiscal Year Annual Research Report
動脈石灰化におけるmatrix metalloproteinaseの役割
Project/Area Number |
16390351
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
笹嶋 唯博 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20109515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角浜 孝行 旭川医科大学, 医学部, 助手 (30360986)
山崎 弘資 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20281884)
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Keywords | 動脈石灰化 / マトリックスメタロポロテイナーゼ / オステオカルシン / 中膜硬化 / 糖尿病 / 維持透析 / 電子線プローブマイクロアナライザー / 静脈グラフト |
Research Abstract |
動脈血管壁石灰化機序を究明するため、advanced glycation endoproducts (AGEs)、matrix metalloproteinases (MMPs),osteocalcin発現、電子顕微鏡下で石灰化初期病変微細構造などを解析した。研究対象としてヒト自家移植血管と二型糖尿病モデル動物の動脈としたが、ほとんどで石灰化標本が得られず、最終的に糖尿病・維持透析患者の下肢血行障害に対する自家静脈グラフト(AVG)が主な対象となった。 AGEsは弾性線維層の豊富な内胸動脈グラフトで染色されず、筋性動脈グラフトで陽性、弾性線維層の乏しいAVGで強陽性であった。これは弾性線維層がAGE化に防御作用を持つことを示唆したが、石灰化は認められず、AGEsと石灰化の直接的な関連は証明されなかった。MMPsの発現では、非石灰化標本で観察されたが、石灰化標本ではみられず、これは元来中膜細胞が乏しい上、移植後の変性が加わってためと考えられた。即ちMMPsの発現は移植早期に現れ、その後、中膜組織が変性を来してMMPsの関与は消失し、石灰化はその後にはじまるものと推察された。Osteocalcin発現も同様に石灰化との直接関連は得られなかった。 初期石灰化病巣の電子顕微鏡による追跡では、AVG横断面走査電顕により多数の石灰化初期病巣が捉えられ、それらはさらに電子線プローブマイクロアナリシス面分析でCaとP元素の共存を確認し石灰化巣であることを証明した。これに基づいて血管の内面から約30ミクロン以上の外側にある同一標本の特定石灰化巣について分析電顕を行い病変を追跡した。エネルギー分散型X線分光法を用いた石灰化巣の微細構造分析では、最小で直径約70-300nmの石灰化巣が検出され、染色により形成部位は細胞外であり、石灰化粒子をさらに強拡大した結果、内部にはさらに直径10-20nmのナノ粒子があり、それらによる集合体であることが確認された。 以上より、石灰化は中膜細胞外にある何らかの"核"に結晶が形成され、その核は10-20nmの結晶の中にある。石灰化する部位とそうでない部位が混在することはその核が特異的であることを示唆している。その核をつきとめることが今後の課題である。
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