2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16390451
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 行雄 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (60294063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 卓彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10273640)
真下 節 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60157188)
松田 直之 富山大学, 医学薬学研究部, 助教授 (50332466)
服部 裕一 富山大学, 医学薬学研究部, 教授 (50156361)
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Keywords | 脳死 / 心機能 / 不整脈 |
Research Abstract |
脳死に伴う中枢神経の廃絶が心機能に与える影響について昨年から継続的な研究を続けると同時に脳死に伴う心機能の低下を抑制する薬剤療法についても検討した。 (1)脳死に伴う心機能の変化とニコランジルの効果 Pratschkeらの方法(Transplantation 67:343-8,1999)に基づいて確立したラット脳死モデルにより、コンダクタンスカテーテルを用いた心機能の評価を行った。脳死に伴い、血圧の低下は脳死後5-6時間を要するが、脳死導入後2-3時間でEjection Fractionの低下が認められる。つまり、脳死後の早期に現れるEjection Fractionの低下を抑制することで脳死後の心機能の維持につながると思われた。ATP感受性Kチャンネルの開口薬であるニコランジルはいわゆるpreconditioning作用で心筋保護に働くことが知られているが、これを脳死前から持続投与することでEjection Fractionの低下に至る時間を延長し、結果脳死後6時間での生存率の改善が見られた。またこのニコランジルの作用はミトコンドリアATP感受性Kチャンネル阻害薬で消失した。脳死による心機能の破綻にミトコンドリアATP感受性Kチャンネルが関与していると思われた。 (2)中枢神経による不整脈制御 脳死状態における循環動態の破綻のメカニズムを解明するため、周術期不整脈のモデルであるハロセンーエピネフリン不整脈を用いて不整脈発生における中枢神経の役割を検討した。迷走神経の刺激からその情報伝達物質であるアセチルコリン、心臓のアセチルコリン受容体、PTX感受性Gタンパク、protein kinaseA、さらにはPhosphatidylinositol(3)-kinase(PI3-K)を介して、最終的にはミトコンドリアATP感受性Kチャンネルを開口させ、抗不整脈作用をもたらすことを示した。迷走神経刺激としては脳内のイミダゾリン受容体のタイプ1刺激がこの制御に深く関与していた。この結果は脳死による中枢神経の廃絶は、脳内の受容体機能の廃絶を意味しそれに伴い副交感神経機能の廃絶も起こる。そのためアセチルコリンの持続的な放出も起こらなくなり、結果として心臓が不整脈を起こしやすくしていることが脳死に伴う循環動態の破綻の一翼を担っていると考えられるがそのメカニズムの一端が明らかとなった。
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Research Products
(2 results)